この記事の監修ドクター|北山 大祐先生(きたやま胃腸肛門クリニック)
ピロリ菌の完全な除菌には、医師による除菌治療が必要ですが、除菌効果のある食品もあります。毎日の食事に取り入れてみませんか。
ピロリ菌は胃がんの原因菌です
ピロリ菌は正式名称をヘリコバクターピロリ菌と言い、強い酸性である胃の中でも生きられる菌です。胃の粘膜に感染して、炎症や萎縮を起こし、胃炎や胃潰瘍、胃がんの大きな原因となります。
ピロリ菌の感染者は、感染していない人に比べて、胃がんになる確率が10倍以上とされています。日本におけるピロリ菌の感染は、主に井戸水によるものが多く、そのため上下水道の整備が進んだ若年層の感染は少なく、高齢になるほど感染率が高いのが特徴です。
ピロリ菌を抑制する食品があります
ピロリ菌の活動や増加を抑える食品はいくつもあります。食事に上手に取り入れて、胃の健康を守りましょう。
- ヨーグルトで減らす
- ヨーグルトに含まれるビフィズス菌などの乳酸菌は、ピロリ菌の増加を抑えてくれる働きがあります。また、乳酸菌は腸内環境を整えてくれます。腸は、人体の中で最大の免疫機関とまで呼ばれる臓器です。腸内環境を整えて、ピロリ菌を抑える元気な体を目指しましょう。
- ココアで減らす
- ココアには、ピロリ菌が胃の粘膜に定着するのを妨害する働きと、ピロリ菌の増加を抑える働きがあります。ウーロン茶や紅茶、コーヒーにも似た働きがありますが、ココアが最も効率よく少ない量で働いてくれます。ココアは胃に優しい飲み物としても、豊富な食物繊維で腸内環境を整える働きとしても、ピロリ菌に有効です。
- 日本酒で抑える
- 日本酒の中で「米米酒」という種類に含まれる成分で、ピロリ菌の増加を抑える働きがあるものがあります。胃の粘膜を守り、胃炎や胃潰瘍の予防をしてくれます。ただ、あくまでの適度な摂取が必要です。
- 梅干しで殺菌効果
- 日本古来の保存食品で、食卓やお弁当に欠かせない梅干しですが、ピロリ菌を殺菌する働きと、活動を抑える働きがあることがわかっています。もともと胃などお腹の症状を和らげる食品としても利用されていましたが、ピロリ菌に対抗する力もあるのですね。
- ブロッコリーで減らす
- ブロッコリーはアブラナ科の花の新芽を食べる野菜ですが、この新芽(スプラウト)に、ピロリ菌を減らす成分と、ピロリ菌を殺菌する成分があります。カイワレ大根もアブラナ科のスプラウトですので、同じ効果が期待できます。サラダや天ぷら、スープやシチューに入れるなど、食べ方も様々に楽しめる、食卓に乗せやすい野菜です。
- はちみつで抑制
- はちみつはもともと殺菌力の高い食品として有名ですが、近年ピロリ菌に対抗する力もあることがわかってきました。紅茶やコーヒーに砂糖代わりとして使う、料理の味付けに利用するなど、ちょっとした工夫で取り入れられる食品です。
- シナモンで対抗
- シナモンはニッキとも呼ばれる香辛料で、クスノキの樹皮から作られます。ピロリ菌を殺菌する働きの他に、コレステロール値を下げる、中性脂肪を減らすなどの生活習慣病にも効果的な働きをしてくれます。
- 海藻のぬめりはピロリ菌の強敵
- 昆布やめかぶなどの海藻類に見られるねばねばは、「フコイダン」と呼ばれるぬめり成分です。このぬめり成分が胃の粘膜を守って、ピロリ菌の定着を妨げてくれます。さらに胃がん細胞の増加も防いでくれる、頼もしい成分です。
- 緑茶で活動抑制
- 緑茶に含まれるカテキンという成分が、ピロリ菌の活動を抑制する働きがあります。毎日の飲み物を緑茶に変えてみてはいかがでしょうか。
ピロリ菌は胃内視鏡検査で感染が調べられます
ピロリ菌に感染しているかどうかは、胃内視鏡検査で調べることができます。胃内視鏡検査は、カメラの付いた細いスコープを、鼻や口から胃へ通して、胃内部を観察する検査です。検査中に組織採取ができますし、異常が見つかれば切除などの治療も行うことができる、とても有用な検査方法です。 ピロリ菌検査は他に、血液、便、尿なども調べられます。ただし、保険診療で行うためには条件があります。
胃がん予防に胃内視鏡検査
胃がんは、日本人のかかるがんの第2位、がんによる死因は3位です。ピロリ菌に感染していると、胃がんになる確率は感染していない人に比べると10倍以上です。日本は世界でも胃がんにかかる確率がトップの国です。
胃が弱い自覚のある人や、胃炎を繰り返す人など、気になる症状は早めに専門医を受診し、胃内視鏡検査を検討しましょう。胃内視鏡検査は、内視鏡専門医で受けることができます。