パニック障害はただ混乱してあたふたしてしまうことではありません。つらい症状を繰り返してしまう病気です。実際の症状や治療はどうやって進むのでしょうか。
パニック障害という病名を聞くと、どんな症状を思い浮かべますか？何かしらのパニックを起こすのだろう、何か予想もしなかったことが起きた時に対処できず、パニックを起こしてしまうのだろう…といった感じでしょうか。パニックは一過性のもので、放っておけばそのうち落ち着くのだろう…などと考えており、パニック障害は病気だという認識が薄い人も多いのではないでしょうか。
この病気にかかったことのある芸能人が、克服後に「実は長年パニック障害に悩まされてきた」などと後になってテレビや雑誌で告白しましたので、名前だけは聞いたことがあるという人は増えています。しかし、実際どのような病気なのか、いったい何にそんなに悩むのかはあまり知られていません。
パニック障害ってどんな病気？
パニック障害は突発的な出来事に対処できないために起こるというものではありません。この病気は、何の前触れもなく、突然胸がドキドキして息が苦しくなり、息切れや脱力感、冷や汗、吐き気といった症状が起こります。
このような身体症状に加え、強い不安感、発狂しそうな感じに襲われたり、恐怖感に襲われるなどといった精神症状があるのが特徴です。この特徴はパニック発作と呼ばれるもので、パニック障害の主な症状となります。突然このような症状が起こり、数分のうちにピークに達しますが、30分程度で症状はおさまります。
パニック障害を繰り返すうちに、予期不安と呼ばれる症状に悩むようになります。これは、発作の経験が強く残り、「発作が起きるかもしれない」「発作がもし起こったら、どうしよう」などと不安になります。
この予期不安が強くなると、広場恐怖症と呼ばれる症状に悩まされるようになります。これは、以前発作を起こした場所や、電車やバスといった交通機関、エレベーターやトンネル、劇場などの閉鎖空間、反対に橋や大きな広場といった開放空間、人ごみの中や一人での外出や留守番といった状況を避けようとする症状です。すぐに逃げ出せなかったり、助けを呼べない場所を非常に嫌がる傾向があります。
最近の研究によると、パニック障害の症状が進んで広場恐怖症が起こるのではなく、すでに広場恐怖症のある人がパニック障害をになるケースが多いことが分かっています。
パニック障害は慢性化する？
パニック障害に対して何の手も打たず繰り返していると、やがて慢性化します。慢性化した場合、治療がやっかいになります。
というのも、不安のあまり、電車やバスに乗れなくなったり、一度乗っても降りられなくなるなど、交通機関がまともに使えなくなります。
また、人ごみが怖い、一人でどこかに行くのも怖い、橋を渡ったり、トンネルを抜けるのが怖い、広い駐車場が怖い…等々、何をするのも恐怖を感じてしまうようになり、正常な社会生活を送れなくなってしまうのです。こうなった時、パニック障害だけでなく、うつ病を合併することもあります。
パニック障害の原因
このようなパニック障害ですが、どうして発症するのかというと、実ははっきりとした原因は分かっていません。
かつては過去のトラウマや性格など、心因性のものであると言われていましたが、現在は、身体因性であると考えられており、脳内の化学物質の働きに異常があるためでないかと言われています。
その中でも特に関係があると考えられているのは、ノルアドレナリンやセロトニンなどといった物質です。これらの物質は情報伝達物質ですが、これらが過剰に分泌されたり、不足したりしている、あるいはこれらを受け取るレセプターと呼ばれる受容体が、過敏になったり反対に鈍くなっているために、パニック障害が起こるのではないかと考えられています。
パニック障害になりやすい人って？
また、パニック障害の患者さんには、家族や近親者にパニック障害やうつ病、アルコール依存症といった病気が多くみられる傾向にあります。
このことから、不安を感じやすい体質がこの病気と関係しているのではないかと考えられています。
パニック障害の治療は
パニック障害は薬物療法や認知行動療法（間違った心の反応を治療すること）により治していきます。この他にも食生活や生活習慣も正すことで、症状を改善します。ある程度時間はかかりますが、適切な治療を受けることで改善されていく病気なのです。
