通常、ものを見ようとするときには、右目と左目の両方が見ようとする対象を向いています。しかし、物を見ようとする時に、片目は正面を向いていても、もう片目が違う方向を向いてしまっている状態を斜視といいます。
斜視の種類
斜視の種類は、目の位置によって変わります。
片目が正常な位置にある場合、大きく下の四つに分けられます。
- 内斜視:もう一方の目が内側に向いてしまっている状態
- 外斜視:もう一方の目が外側に向いてしまっている状態
- 上斜視:もう一方の目が上側に向いてしまっている状態
- 下斜視:もう一方の目が下側に向いてしまっている状態
また症状の出方によって、
- 恒常性斜視:いつも斜視の状態
- 間歇性外斜視:時々斜視の症状が出る
に分けられます。この間歇性外斜視は最も日本人に多くみられる斜視です。
その他、偽斜視というものがあります。目が外向き、または内向きに見えるのに斜視の症状が現れていない、赤ちゃんに多く見られる症状です。鼻が低い赤ちゃんは、目と目の間が広いため、黒目の内側にある白目が見えにくく、黒目が内側に寄って見えるからです。成長とともに鼻も高くなるので、この様な状態は改善されますので、心配する必要はありません。内斜視と似たような状態に見えることが多く、斜視との鑑別が非常に難しいのが特徴です。
斜視の要因とは
眼球には眼筋といわれる筋肉が6つありますが、なんらかの理由でこの眼筋のバランスが悪かったり、神経に異常があったりすることで斜視になります。また、眼球を動かしている筋肉に異常があるケースや遠視が強く出ている場合も、斜視の要因になります。
脳の血管障害などが要因であるケースもあります、これらの要因により、眼筋が麻痺し、正常に機能しなくなることで、斜視の要因になるケースもあります。目の怪我や病気などが要因で一方の視力が低下すると、結果的に両眼視ができなくなり、斜視になるケースがあります。
ちなみに両眼視とは、右眼と左眼を同時に使い、見たものを脳で単一物として認識することをいいます。両眼視という働きがあるおかげで私達は近くのものを立体的に感じることが出来るのです。
斜視の怖さ
人の視機能は、およそ9歳前後にはほぼ大人と変わらない機能が完成すると言われています。従って、それまでに両眼の視力に極端な差があったり、斜視があったりすると十分な両眼視機能が獲得できないままになってしまう可能性がありますので、早期に適切な治療を行うと良いでしょう。
そうすることで正常な両眼視を獲得することが可能です。しかし、9歳前後をすぎると治療によって獲得できる可能性も非常に低くなってしまいます。その点でも、視力不良や斜視を乳幼児期に早期に発見・治療を開始する事が大切なのです。
斜視の治療
斜視は要因によって治療法が異なります。遠視が要因の場合には、通常、凸レンズのめがねをかけて遠視を矯正します。病院によっては、調節を改善する目薬を用いることもあります。
要因が遠視以外の場合には、目の筋肉を調節する手術を行うことがあります。手術は通常、局所麻酔で、時間もかからず短時間で終わりますが、乳幼児の場合は全身麻酔で行います。まれに、手術で目の向きをなおしても、両眼視ができない例があります。また、斜視から弱視になっているケースは手術の前や後に弱視に対する訓練を行う必要もあります。
視力は初めから備わっているわけではなく、段々と発達していきます。また、子供は見えない世界にすぐ順応できてしまうこともあり、見えないという症状を自分から訴えることが少ないものです。斜視は家族のちょっとした注意でみつかることもあるので、少しでもおかしいと思ったら早めに眼科医に相談しましょう。