弱視という言葉を聞いたことがあるでしょうか。弱視とは視力の発達が止まってしまった状態をいいます。どんな症状があり、どんな問題が起こり、どんな治療が行われるのでしょうか。
弱視とは
弱視と聞くと、視力が非常に悪いことを言うと思ってしまいがちです。例えば視力0.01などといった場合を弱視というのではないかと考えてしまいますが、実は弱視は視力が悪いことをいうのではありません。
例えば裸眼視力が0.01であっても、眼鏡やコンタクトレンズの装着で、1.0に矯正されてちゃんと見えるのであれば、弱視とは言いません。弱視というのは、眼鏡やコンタクトレンズによる矯正を行っても視力が上がらないことです。もっというと、何らかの目の病気により視力が上がらないことをいいます。
弱視は、幼児期にきちんとした視力の発達が何らかの原因で行われず、物が見えにくい、見ることができないという状態が長らく続き、視力の発達が止まってしまっている状態です。そのため、例えば成長途中あるいは大人になってから視力が低下してしまった場合とは、裸眼でのものの見え方が違います。
近視や乱視で視力が低下した場合、とにかくものがよく見えず、ピントが合わないような、ゴーグルを付けずに裸眼で水中で目を開けているような、そんな状態です。しかし、弱視の場合は、ピントは合っているのにおおざっぱに見える、くっきり見えているが細かい部分の認知ができない、ゴミがかぶさっているようにものが見える…等々、近視・乱視による視力低下とは異なった「見えにくさ」があります。
弱視の種類
弱視にはいくつかの種類があります。
屈折異常性弱視
左右両目とも、強い遠視・乱視があることで生じる弱視
不同視弱視
左右のどちらかの目だけに強い遠視・乱視があるために生じる弱視
斜視弱視
斜視がある方の目の中心が使用されないために生じる弱視
形態覚遮断弱視
先天性白内障、眼窩腫瘍等明らかな形態覚遮断の既往があることで光が遮断されることによる弱視
などが、代表的なものになります。
弱視は幼児期の早期治療が大切
眼鏡をかけてもコンタクトを装着しても視力が矯正されるわけではない…そう聞くと、不治の病なのではないかと心配になってしまいます。しかし、弱視は早い段階で治療を開始すれば治ります。
3歳までに治療を始めれば、治癒率は9割程度、7歳までなら7割程度といわれています。しかし、幼児期に弱視に気づかずにそのままにしてしまい、大人になってから治療をしようとしても、視力が未発達な状態で脳が完成してしまいますので、この段階での有効な治療法はありません。
早めに発見し、適切な治療を受けると治る確率も格段に上がりますので、幼児期に見つけて治療することが重要です。そのため、3歳児検診など、幼児期の検診をきちんと受け、異常があればすぐに治療を開始することが必要になります。
幼児期の弱視チェックポイント
- ものが見えにくそう
- よく人やものにぶつかる
- 転びやすい
- 左右片方の目を隠すことを極端に嫌がる
- ものを見るときに首を傾げる
- 集中力がない
などといったケースも弱視の可能性がありますので、一度眼科で診てもらいましょう。
弱視の治療方法
眼科で弱視であると診断されたら、治療が開始されます。治療法は弱視のタイプによりさまざまです。例えば左右の視力に極端な偏りがある不同視の場合は、良い方の目を眼帯やアイパッチでふさぐ遮蔽法と呼ばれる治療法がよく採られます。
不同視弱視の場合は眼鏡とアイパッチを併用するなどの方法が採られます。形態覚遮断弱視は、それを引き起こす原因となっている病気をまず治療しなくてはなりませんので、そのための手術を行います。弱視が片目だけなら、その後アイパッチや眼帯等で視力の正常な方の目を隠し、弱視の方の目で細かいものを見るようにします。
このようにして治療が行われますが、いずれにせよ、早いうちに治療を開始することが非常に重要で、子どものうちの治療が肝要です。大人になってからでは治療が困難になりますので、弱視と分かったら、幼児期のうちに治すようにしましょう。