めまいは耳の異常で起きることもあるとご存知でしょうか。どんな原因でどんな治療が行われるのでしょうか。
めまいはよくある症状の一つで、ちょっとふらついても、すぐに回復する場合はさほど気にしません。しかし、めまいが頻繁に起こる場合は、気にしないわけにはいきません。めまいを耳鼻科などで受診しても、特に異常が見つからず、治療することもできずに長年苦しむ人が多いのです。
めまいにはいろいろな種類があります
めまいが起こる原因は非常に複雑です。めまいには2つのタイプがあり、
①回転性めまい:自分がくるくると回っているような感覚やエレベーターに乗った時のような下に下がる感覚に襲われるもの
②非回転性めまい:ふらふらしたりくらっときたりするもの
に分けられます。
また、めまいは、それを起こす原因部位によって中枢性と末梢性に大別されます。
A 中枢性めまい:脳の障害によって起こります。
B 末梢性めまい:平衡感覚を担う内耳の障害によって起こります。
このようにめまいは、脳と内耳、それぞれの部位での障害が原因となりますが、ここでは後者の「内耳の障害が原因で起こるめまい」について説明します。
内耳の障害が原因で起こるめまいとは
耳は外耳、中耳、内耳から成ります。奥の方に位置する内耳には、その中にある前庭というところに、細い管が3本つながったような三半規管があります。三半規管の管はリンパ液で満たされています。
私たちが下を見たり振り向いたりなどして頭を振ると、その頭の動きに伴って内耳の中のリンパ液にも流れができます。この流れや前庭の耳石と呼ばれる石の動きを有毛細胞がキャッチし、情報を内耳神経を通じて脳に伝えます。そうすることで、私たちはどの方向を見ているか、頭が傾いているのかを判断できるのです。
しかし、内耳に何らかの障害…例えば、一部の管にゴミがたまったりすると、内耳のリンパ液に流れができません。しかし、他の管は正常にリンパ液が動きますので、ここで情報の食い違いが起こります。このようにして情報に違いができると、脳は情報を処理できず混乱した結果、めまいが生じるのです。
内耳障害が原因のめまいは回転性が多い
内耳の異常によって起こるめまいは、個人差はありますが、くるくると回るような回転性のことが多く、強く、短く、反復するのが特徴です。また耳の異常によって起こっているため、耳鳴りや難聴を伴うことがありますが、意識障害や麻痺などは起こりません。
内耳の障害とは
では具体的にはどんな内耳の障害があるのでしょう。
メニエール病
末梢性めまいの中でも比較的多くを占めます。リンパ液が何らかの原因で異常に増加してしまい、内リンパ水腫(内耳のリンパ管が水膨れの状態)を引き起こしてしまうことで生じるとされています。
良性発作性頭位めまい症
頭を動かしたときに前庭にあるはずの耳石がはがれてしまい、三半規管へ侵入してしまうことによって起こります。多くが短時間の回転性のめまいです。
前庭神経炎
内耳にある前庭神経が炎症を起こすことによって、正常な情報が脳へ伝わらず、めまいが起こります。風邪などのウイルス感染野内耳の血液循環障害が原因として考えられています。
外リンパ瘻
飛行機に乗ったり勢いよく鼻をかんだりなど、髄液圧や中耳圧が急上昇した時に、髄液が内リンパ腔に漏れてしまうことによって起こります。回転性めまいの他に耳鳴りや難聴なども生じると言われています。
中耳炎
中耳の炎症が内耳へ波及し、前庭や三半規管、蝸牛の働きに異常によってめまいが起こります。炎症は徐々に波及するため急にめまいが起こることはないでしょう。
突発性難聴
主症状は急激な難聴ですが、めまいを併発することがあります。しかし強いめまいを繰り返すことは少なく、概ね時間経過とともに軽快します。
内耳障害によるめまいの治療とは
これらの内耳の障害に当てはまる症状に気付いたら病院へ行って先生に相談しましょう。先生の問診では回転性なのか、どのくらい持続するのかなどめまいの性質について、難聴、耳鳴りなどが伴うか、頭を動かした時、急に起きた時などどんな動きでめまいが起こるのかをお話しします。問診の他には聴力検査やレントゲン、眼振検査、足踏み検査の結果を総合してめまいの原因を特定していきます。
これらに対しての治療についてですが、中枢性めまいではないと判断されれば急性期はめまいが起こらない体位で安静にしてもらうことをお勧めします。鎮暈剤や制吐剤、精神安定剤などでめまいやそれに伴う嘔気・嘔吐を和らげる対処をすることもあります。
症状が落ち着いてきたら、ストレスや過労、睡眠不足などめまいの原因になりうるものを取り除くことを心がけましょう。メニエール病や外リンパ瘻は外科的手術が必要な場合があります。
めまいの原因は脳の中の問題だけではなく、耳の中に問題があることも覚えておくと必要以上に焦らずに済むかもしれませんね。