かかる人も亡くなる人も増えている乳がん。誰もがかかる可能性があります。
増えている乳がん
乳がんは、現在、日本人女性がかかるがんの27.6%を占め、罹患率のトップです。第2位の結腸がんが10.8%、第3位の胃がんが9.1%ですので、乳がんの割合の多さは断トツだといえます。また、乳がんは、罹患率そして死亡率が増加し続けている病気です。1975年以降、右肩上がりで、急激な増加が目立っています。
国立がん研究センターの統計では、2015年に乳がんと診断された人は約9万人で、いまや12人に1人が生涯のうちに乳がんを発症するといわれています。決して珍しい病気ではなく、他人事だと思ってはいけません。国立がん研究センターでは、毎年がんの統計予測を公開していますが、そこでも乳がんは毎年増加すると予測されています。
乳がんはもともと欧米人に比べて日本人には少ないとされてきました。50年前には、乳がんを発症する女性は50人に1人でした。10年前でも23人に1人でした。なぜ近年、12人に1人というほどに増加したのでしょうか。
乳がん増加の理由とは
乳がん増加の主な理由として、食生活の欧米化、女性の社会進出があげられます。乳がんの原因はいまだはっきりと解明されていないのですが、女性ホルモンの1つであるエストロゲンが、がん細胞を増殖させ、乳がんを引き起こすといわれています。
月経回数とエストロゲン分泌の増加
エストロゲンは月経中に多く分泌されます。食生活が欧米化して、高タンパクかつ高脂肪の食事をとるようになった日本人は、成長が早期化して体格が良くなり、初潮が早く、閉経が遅くなる傾向にありますし、社会進出によって妊娠・出産を経験する女性が減少していますので、生涯に経験する月経の回数が多くなり、エストロゲンの分泌が増えています。
現在の日本人女性は、生涯で550回も月経を迎えるといわれています。よって、乳がんの発症が増えていると考えられています。特に、11歳以下で初潮を迎えた人や、54歳以上で閉経した人には乳がんのリスクは高くなります。
閉経後の肥満
エストロゲンは月経で分泌されるだけでなく、皮下脂肪にも蓄えられています。脂肪が増加すると、エストロゲンをはじめとした女性ホルモンの過剰な蓄積を招き、乳がんのリスクが高まります。閉経後の肥満は、特に乳がんの高リスクとなり、注意が必要です。
他にも乳がんのリスクとして次のようなものが挙げられ、現代の日本人女性ならあてはまることが増えているのではないでしょうか。
- 初産年齢が高い
- 授乳歴がない
- 祖母、母、子、姉妹に乳がんの人がいる
- 喫煙している
- 大量に飲酒する習慣がある
- 運動不足
乳がんになりやすい年齢
どの年代でも大幅に乳がんの罹患率は増えていますが、40歳代にいたってはこの20年間の間に罹患率は2倍になっています。年齢別に乳がんの罹患率を見ると、20歳前後から発症し、30代後半から増加し始め、40代後半から50代前半までが発症のピークとなり、閉経後の60代前半でも多くの発症が見られます。日本人女性の乳がん罹患率の特徴として、40代後半から50代前半と、60代前半の2つのピークがある二峰性のグラフになることが挙げられます。
誰でもなる可能性があります:検診で早期発見を
胃がんや肺がん、大腸がんのように、加齢にともなって罹患率が高まるのではなく、1度目のピークは働き盛りを襲うということがわかります。また、20歳前後からの発症が認められているため、誰しも乳がんを発症する危険性があり、備えが早すぎるということはありません。
乳がんは見つかるのが恐ろしいのではなく、初期のうちに見逃して進行されてしまい、死亡率を高めるのが恐ろしい病気だと覚えておきましょう。「仕事が忙しくて検診にいけない」、「まだ若いから大丈夫」といった考えで、乳がん検診を先延ばしにしていませんか。早期発見し、適切な治療を受けられるよう、乳がん検診を受診することが大切です。