増え続ける乳がん。20代から発症する可能性のあるがんです。早期発見のために乳がん検診へ行きましょう。
増え続ける乳がん
日本では、乳がんの罹患率・死亡率ともに増え続けているのが現実です。2014年には乳がんで13317名もの方が命を落としました。これは乳がんを発症した人の30%程度にあたります。また、1980年の乳がん死亡者数と比べると、3倍以上になっています。一方、アメリカやイギリスでは、乳がんの罹患率は増えているものの、死亡率は低下しています。
乳がん検診で早期発見を
この背景に、欧米の検診受診率の向上、そして日本の乳がん検診の受診率の低さがあります。乳がんは、生死に関わる病気ではありますが、乳がんを初期のうちに発見できれば、10年後の生存率は約95%と高く、乳がんが死亡原因にはならなくなります。それが、乳がんを発見したのが末期だと、10年後の生存率は約25%まで下がってしまいます。つまり、早期発見し、早く治療にかかることが、生存のカギを握っています。
予防法がない乳がん:早期発見が大切
乳がんはこれといった予防方法がない病気ですので、早期発見して適切な治療をすることに力を入れたほうが賢明です。乳がんは、決して珍しい病気ではありませんし、やみくもに恐れることはありません。
実際、ステージⅠまでの早期発見ならほとんどの方が治っています。乳がんが見つかるのが怖いというのは筋違いで、乳がんの初期症状を見逃して進行させてしまうことが怖いのです。
他の多くのがんがそうであるように、乳がんも自覚症状が出て受診する頃には進行していることが多いです。乳がん検診によって、早期発見できれば、治療の選択肢も増えますし、身体的負担は減ります。がんが小さいうちに適切な治療をすれば良好な経過が期待でき、乳がんによって失うものを減らせるでしょう。
乳がん検診受診率の低さが課題
日本では、国が定期的な乳がん検診を推奨しているものの、実際の乳がん検診受診率は、OECD(経済協力開発機構)加盟国30か国の中で最低レベルになっています。アメリカでは80%、フランス、イギリス、韓国でも70%以上の乳がん検診受診率を打ち出しているのに対し、日本はわずか36.4%にとどまっているのです。乳がん学会が行った調査で、乳がん発見状況の56%は自己発見、検診による発見は28%というデータがあります。検診がまだまだ普及していないことを示しています。
乳がんは20代から発症する
日本で乳がん検診を推奨されるのは、40歳以上であること、また放射線被ばくの議論のあるマンモグラフィを若い女性に適用していないことも、若年層の乳がん発見を遅らせています。
乳がんは20歳前後から発症する可能性がある病気です。「若いから平気だろう」と油断せず、20代から早期発見のためにセルフチェックと医療機関での検診をすることが勧められます。たしかに若い世代では乳腺が発達していてマンモグラフィはできないのですが、超音波検査や視触診で乳がんを見つけられる場合があります。
マンモグラフィ検査のメリット
そして、40歳を迎えたら、乳がん発症のピークとなりますので、医療機関でのマンモグラフィの検査を受けることが重要になります。マンモグラフィ検査は、広範囲に読影が可能で、がんの初期症状である微細な石灰化や腫瘍を発見できるので、早期発見に有効です。
マンモグラフィでの放射線被ばく量は、実際ごくわずかであり、骨髄などへの影響がないことから、危険性はほぼありません。現在、乳がん検診の中で、最も信頼できる検査だといわれています。国での指針では、2年に1度とされていますが、セルフチェックでしこりなど自覚症状がある場合は、検診を待たずに、受診しましょう。
乳がん検診にかかる費用は、検査の種類、個人検診か自治体検診かによって変わります。40歳以上の女性であれば、自治体による検診が2年に1度あり、無料~3000円と安く受けることができますし、自分や夫の勤務先の健康保険組合で助成してもらえることもありますので、経済的負担もさほどありません。