人工中絶をしないために、ピルをもっと身近なものにしよう!

人工中絶をしないために、ピルをもっと身近なものにしよう!

この記事の監修ドクター|西平 正之先生(さくらレディースクリニック)

日常的な避妊法として、最も効果的なものがピルです。正しく知って、避妊法の選択に役立てましょう。

人工中絶をしないためにはピル
(OC、経口避妊薬)が有効です

人工中絶はできるだけ避けたい手術とは、誰もが考えていることではないでしょうか。人工中絶を避けるためには、避妊をしっかりと行い、予定外の妊娠、望まない妊娠をしないことが大切です。

ピルは世界中で服用されている、とても頼りがいのある、避妊効果の高い薬です。毎日飲む必要がありますが、慣れれば飲み忘れも少なくなり、安心して性行為に臨むことができます。女性が自分の意志で、自分の人生をコントロールする力を手に入れることができるようになったという点でも、ピルの影響は大きいものがあります。

ピルにはいろいろな種類があります

緊急避妊ピル(モーニングアフターピル)

避妊に失敗してしまった、あるいは避妊せずに行われた性行為があった場合に、72時間以内に服用することで、妊娠を98%の確率で防ぐことができるピルです。しかし、医師の処方が必要であること、保険の適用ができないこと、吐き気や嘔吐を催すなどの副作用が少なくないなどのデメリットはあります。

また、副作用の面からもこの方法を「いつもの避妊法」とすることは避けましょう。性行為の度に緊急避妊ピルを服用するよりも、毎日服用する以下のピルの避妊効果には適いません。また、性感染症の予防はできません。
中容量ピル

日本国内で発売されているピルの中で、唯一保険適用で服用できるものです。月経困難症や月経周期不順などの改善に効果的です。避妊薬として一般的な低用量ピルよりも薬効が強いため、飲み忘れによって避妊効果が左右されにくいのも安心感があります。

しかし、含まれる薬剤の量は多めなので、副作用が出ることがあります。フラノバールなどが知られています。
低用量ピル

世界中で最も多く女性に服用されているピルです。低容量ピルの中でも、1シートの中で成分が変わらない一相性、2段階に成分が変わる二相性、3段階に変わる三相性があります。

一相性の代表的なものがダイアン35やマーベロン、オーソや保険適用のルナベル、三相性の代表的なものがトリキュラーやアンジュなどです。含まれるホルモン剤が低容量であるため、副作用も少なくなっています。
超低用量ピル
第四世代とも言われるさらに少ない薬効成分のピルです。ヤスミンや保険適用のヤーズなどがあります。副作用はさらに減りましたが、飲み忘れによる避妊効果の減退は大きくなりますので、注意が必要です。

ピルを飲むとこんな良いこと!

ピルを飲むと、避妊効果以外にもこんなメリットがあります。

  • 月経周期が整う
  • 経血量が少なくなる
  • 生理痛が緩和される
  • 生理前のイライラなど(PMS、月経前症候群)が緩和される
  • 肌の調子が良くなる

もちろん、妊娠や出産と言った、女性の人生を大きく変化させるイベントを、女性自身の意志でコントロールできるようになる、という点が、何よりのメリットかもしれませんね。

ピルは副作用が怖い?

避妊薬としてのピルは、世界中の女性たちに服用され、さまざまな効果を挙げていますが、日本では今ひとつ服用者数が伸びません。先進国のピル服用率は、イギリス28%、ドイツ37%、フランス41%という報告がありますが、日本においては1%です。日本の女性たちが服用をためらう理由の最も多いものに、副作用が怖いと言うものがあります。ピルの副作用はそんなに怖いのでしょうか。

ピルの副作用で最も怖いものは血栓症のリスクです。ピルを服用していない女性の血栓症リスクは10,000万人当たり1~5人に対して、服用女性は3~9人となります。確かに服用するとリスクは上がりますが、妊娠中(5~20人)や出産後(40~65人)と比較すると、服用時のメリットと照らし合わせてもためらうべきことか?は考えたい問題です。

服用中は水分をしっかりとる、前兆症状に気をつけ、気になる症状は放置せずに迅速に対応するなどの対策をとり、ピルの安全な服用を心掛けましょう。

ピルで女性の人生をより良いものに

女性が自分の意志で行い、人生をコントロールできる避妊法としてのピルは、とても頼りがいのある薬です。もちろんリスクは考慮しなければなりませんが、服用することで得られるメリットを、きちんと知ることが大切です。

ピルは怖い薬ではありません。女性の人生を落ち着いた、より豊かなものにしてくれます。妊娠を望むときは服用を止めれば良く、服用していたことによるデメリットはありません。

人工中絶はできる限り避けたい手術ですが、そのために有効な方法としてピルを考えてみませんか?人工中絶やピルについては、婦人科専門医を受診し、相談しましょう。