この記事の監修ドクター|西平 正之先生(さくらレディースクリニック)
女性の40代は社会でも家庭でも大活躍ですが、この年代で高まる人工中絶の危険があります。理由と対策を見ていきましょう。
人工中絶は10代だけの問題じゃない?
人工中絶はどの年代に多いのでしょうか。厚生労働省の統計を見てみましょう。人工中絶の実際の件数と、妊娠を100としたときの人工中絶の割合を抜き出してみました。
20歳未満 17,854件 57.8%
20~24歳 39,851件 31.5%
25~29歳 36,594件 12.0%
30~34歳 36,621件 9.2%
35~39歳 33,111件 12.8%
40~44歳 16,558件 25.0%
45~49歳 1,281件 51.3%
50歳以上 17件 22.7%
(平成26年人口動態統計より)
人工中絶というと、とかく10代の問題として語られがちですが、妊娠を100としたときの人工中絶の割合を見ると意外な事実が見えてきます。件数こそ低いものの、10代に次いで人工中絶の割合が高いのは40代後半なのですね。40代前半も20代前半に次いで高い割合を示しています。
40代で人工中絶が増加する理由は?
40代と言えば、子育てが一段落した、あるいは子育てを終えて一息ついている年代です。心身ともに落ち着いている年代で人工中絶の割合が増えてしまう、つまり望まない予想外の妊娠が増えてしまう理由について考えてみましょう。
① 月経が不定期になる?ホルモンバランスのこと
40代に入ると、女性の身体は閉経に向かって動き始めます。早い人では40代前半から生理不順が始まります。これは閉経に向けて、女性ホルモンが減少していくために起こる自然な変化です。
しかし、ホルモンが減少していくと言っても、予測可能に「今月は28日周期で生理が始まった。来月は30日周期、再来月は32日周期・・・」などとはならないのが困り者なのです。
周期が乱れることはもちろん、周期は変わらずに、経血量が減る人もいます。不正出血が増えることもあり、生理かどうか判断に迷うこともあります。3ヶ月に一度生理が来るなど、周期が延びることもあります。このような場合、排卵日の予測も難しく、結果として避妊に失敗するということが起こってしまいがちです。
② 閉経したかな?つい油断しがちな避妊
更年期に入り、生理周期が延びたり、不定期になると、生理が来ないから閉経かと考えてしまうことがあります。きちんと閉経したかどうかということは、婦人科で検査すればしっかりわかることですが、自己判断に頼ってしまうことも多いようです。
閉経したと考えたため、避妊を行わず性行為があり、妊娠に至ると言うケースが見られます。
40歳からの避妊法!ミレーナって何?
リングという通称で呼ばれる、子宮内避妊器具の1つにミレーナというものがあり、子宮内黄体ホルモン放出システムとも呼ばれます。ミレーナにはその名の通り、黄体ホルモンを放出する機能があり、99.8%と高い避妊効果があります。
また、血栓症の危険が高くなるため、低用量ピルを避けたい30代後半以降の女性に、ミレーナはお勧めの避妊方法です。また、低用量ピルを飲めない、喫煙者や肥満の人にもミレーナは適用されます。
ミレーナは、リングとは言いますが、実際はTの字の形をしており、子宮内に挿入し、5年間は交換せずに効果があります。黄体ホルモンを微量ずつ放出することで、子宮内膜が薄いまま保たれ、受精卵が着床できなくなります。また子宮口の粘液を変化させて精子の侵入を妨げます。
子宮内膜が薄くなるので、経血が減り、痛みなども軽減するメリットがあります。また、妊娠を希望する場合は、抜去すれば妊娠可能な状態になります。ミレーナは、リング(子宮内品器具)のメリットと、低用量ピルの効果を両立させた、40代からお勧めの避妊方法なのです。
デメリットは、挿入前に検査が必要なこと、挿入して1ヶ月でから長くて半年程度、不正出血が見られることです。また、費用も60,000円と高めですが、低用量ピルなら1ヶ月に3,000円程度なので、2年ほどで元が取れると考えて良いのではないでしょうか。
その他の効果的な避妊法
- IUD
- リングと呼ばれる子宮内避妊器具です。医師による挿入と抜去が必要ですが、薬の飲み忘れや、男性による避妊に頼る心配が要りません。授乳中でも使用できる避妊法として効果的です。費用は30,000~70,000円です 。
- OC(経口避妊薬)
- ピルという名で知られている、飲む避妊薬です。医師による処方が必要で、毎月1シート3,000円ほどです。飲み忘れると避妊効果がなくなる場合があり、注意が必要です。薬効で子宮内膜が薄くなりますので、経血量が減る、痛みなどが軽減するというメリットがあります。
パートナーへ、自分へ思いやりを
いかがでしたか?40代の人工中絶の割合が高いと言う、意外な現実と、その理由と対策についてお話ししました。月経がある以上、閉経はしていない、排卵があると危機感を持ち、避妊を怠らないようにすることが、人工中絶に至らないための大切な対策です。
40代は、社会でも家庭でも、女性は忙しいものです。具体的な対策、避妊法の中でも、確実でより「楽ちん」なものを選ぶということも、パートナーの女性への、あるいは女性自身への思いやりかもしれません。人工中絶について、あるいは避妊法については婦人科専門医へご相談ください。