この記事の監修ドクター|石橋 一慶先生(西大井内科)
酒は百薬の長と言われますが、飲み過ぎてしまうと肝臓病になってしまいます。病気の進行の仕方と飲酒量の目安を知って、予防に役立ててください。
「沈黙の臓器」肝臓の役割
肝臓はエネルギーや体の材料の合成、菌やウイルスを無毒化、薬や有害物質の解毒、赤血消化も助ける胆汁の分泌など、様々な役割をもつ生体内の重要な総合工場です。
肝臓は障害が起きてもよほど悪化しないと症状として現れません。肝臓の障害で症状が現れるときは、肝細胞のほとんどがダメージを受けている、壊れてしまっているという重篤な状態なのです。
アルコールのとり過ぎで起こる肝臓の病気とは
多量の飲酒、飲み過ぎが原因でなりやすい肝臓の病気にアルコール性肝障害があります。進行の度合いによって脂肪肝、肝繊維症、肝炎、肝硬変と進みます。
脂肪肝は、最も初期の段階です。無症状で、健診の血液検査でAST(GOT)/ALT(GPT)の増加が発見のきっかけとなり、腹部超音波検査で発見されます。この段階なら減酒・禁酒をすることで肝内に溜まった脂肪の減少が図れます。
肝繊維症は肝細胞の周りに線維が増加している状態です。次に述べる肝炎への進行を防ぐためには年単位の禁酒が必要です。
肝炎の段階になると肝細胞の壊死が増加し、繊維も増加します。この状態になると進行がはやまるため、しっかりした療養を行わなければ肝硬変に移行します。
肝硬変はアルコール性肝障害の最終段階で、肝がんのリスクが高まります。この段階に至っても禁酒によって症状の改善が見られる場合がありますので、禁酒の継続が重要です。
この量なら大丈夫。摂取量の目安とは
アルコールに対する肝臓の耐性は、栄養状態や遺伝的要素などで個人差があります。さらに飲酒量や飲酒期間によって肝障害の程度もさまざまです。
飲酒量はエタノール約30gを1単位として評価され、危険度の目安とります。
1日に2単位、週に14単位までの飲酒であれば安全域とされます(あくまでも目安で、個人差が大きいことに注意してください)
これが1日3単位、週に21単位以上になると肝障害危険域に入ります(あくまでも目安です。これ以下でも肝障害がおこる危険性があります。)
エタノール1単位は、
- 日本酒1合(約180ml)
- ビール大瓶
- ウイスキーダブル1杯(グラス底から指2本分)
- ワイン1/4ボトル(約180ml、グラス2杯ほど)
- 焼酎約2/3合(約120ml)
に相当します。
ご自分の体質、飲酒量と照らし合わせて、危険か安全かの判断の参考にしてください。
飲酒量が少なくても肝障害が起きえます。
上記のアルコール摂取量が安全域であっても安心することは禁物で、現在の肝臓の状態を知ることが重要です。クリニックなどで超音波検査などをうけて脂肪肝の有無を評価したうえで、上記の目安を参考として、ご自身の飲酒量が適正か判断することが大切です。
小さな異常も軽視せず、専門医へ相談を
アルコール性肝障害の患者さんは年々増加の傾向にあります。
アルコール性肝障害は飲酒のコントロールで予防・治療できる肝臓病です。自分の意志で予防できるという点が、ウイルス性の肝炎などとの大きな違いです。
一律に禁酒しろと指示するのは簡単です。
そうではなく、末永くアルコールと楽しく付き合っていけるようご助言することが大切だと思っております。
肝臓は「沈黙の臓器」ともいわれるほど忍耐強い臓器ですので、小さな異常も重篤な段階である危険があります。飲酒についてご心配がある方は早めに専門医へご相談ください。