この記事の監修ドクター|石橋 一慶先生(西大井内科)
食生活が原因となる脂肪性肝炎や日常生活でも感染するリスクがあるB肝炎などについて知ろう
肝炎とは
肝臓に何らかの原因で変性や壊死が起こり、倦怠感や発熱や黄疸などの症状が現れるのが肝炎です。
肝炎にはいろいろな種類があります
非アルコール性脂肪性肝炎(脂肪肝、NASH)
食事で取り込んだ脂肪は、小腸で分解され、肝臓で中性脂肪になります。取り込む脂肪が増え過ぎると、肝臓に中性脂肪が増えて溜まってしまいます。食べ過ぎや肥満、糖尿病が原因で起こる肝臓の肥満症状が脂肪肝です。脂肪肝が進み、肝臓で変性や壊死が起こるようになると肝炎となります。アルコールの摂取がないにもかかわらず脂肪肝から肝炎になる病態を非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcholic steatohepatitisを略してNASH: ナッシュ)と呼びます。
NASHは30~70代の中高年に多く見られます。放置すると肝硬変になり、肝硬変が進むと20%に肝がんが発生します。かつて多くみられたC型肝炎などのウィルス性肝炎が減少している現在において、NASHの肝がんの原因としての割合は徐々に高まっています。
アルコール性肝炎
アルコールを取りすぎると、肝臓がアルコールを分解することを優先することにより脂肪の分解が滞ってしまい、最初は分解されない脂肪が沈着します(アルコール性脂肪肝)。さらに悪化すると肝臓で炎症が起こり肝炎となります(アルコール性肝炎)。
初期の脂肪肝の段階では禁酒をすることで完治しますが、自覚症状が少ないため発見が遅れることが多くあります。
さらに進んでアルコール性肝炎になると、倦怠感や黄疸、吐き気などの自覚症状が出てきます。
さらに悪化すると肝硬変となり、肝がんの原因となります。
かつては大量飲酒を続けた中高年に多い病気でしたが、近年若い年代の無茶な飲酒による発症も増えており、注意が必要です。
ウイルス性肝炎
肝炎はウイルス感染によっても起こり、肝硬変や肝がんの9割がこのウイルス性肝炎のB型とC型によるものです。
A型肝炎
上下水道が整備されていない国や地域などで、ウイルスに汚染された水や食べ物を介して感染する肝炎です。一時的な感染で急性肝炎となりますが、安静にして治療すれば完治します。潜伏期間が1ヶ月と長く、その期間に他者への感染する可能性があります。
先進国内での感染例は少ないですが、衛生環境が充分でない地域への旅行などで感染する例が多く見られます。感染者の多い国や地域への渡航の際は予防接種をしておくと良いでしょう。
B型肝炎
血液を通して感染します。主に母子感染、注射針の使いまわし、性行為感染などです。
血液以外の体液内にもウイルスが存在しているため、日常生活で知らぬ間に感染することもあります。過度の心配は無用ですが、長い日常生活での感染を考慮しお子様へのワクチン接種が開始されています。
成人の方でも、日常生活での感染の危険の心配がある方は医療機関でご助言をうけることをお勧めします。
C型肝炎
血液製剤によって感染が起こりますが、現在は予防策が採られ、新たな感染はほとんどありません。
肝硬変の原因として最も多く、現在も発がんの原因第一位です。
早めの受診が進行を防ぎます
肝臓が炎症を起こす肝炎はさまざまな原因で起こります。ウイルス性肝炎の他に、日常生活に起因する脂肪肝・非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)もあります。肝臓に脂肪が沈着している方は年に1回の超音波検査を行い、肝炎への進行がないか確認することをお勧めします。
肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、悪化するまで症状が現れない臓器です。だるさなどの些細な症状でも重篤な状態であることがあります。症状が現れにくい肝臓ではありますが、検査自体は血液検査とクリニックでの簡単なエコー検査でかなりの評価ができます。異常だけでなくご心配があれば肝臓の診療ができクリニックなどへの相談をお勧めします。