この記事の監修ドクター|久保田 亘先生(宮川クリニック)
5歳を超えて続くおねしょは夜尿症という病気です。どんな治療を行うのでしょうか。
5歳を超えて続くおねしょは病気です
小さな子どもは頻繁におねしょをしますが、大人はしません。これは、成長過程で、睡眠中は尿を濃くして量を減らすことと、睡眠中の膀胱容量を増やすことができるようになるからです。これらができるようになるのが、おおむね5歳頃とされており、この年齢を境に、おねしょが夜尿症という病気として扱われるようになります。
夜尿症というと、何もしなくてもいずれは治っていくものという見方も根強いですが、患者さん(子ども)の心の負担は大きいことが多く、また、少数ながら大人になっても治らないケースもあります。治療の効果も実証されていることから、病気として医療機関にかかることは効果的な選択肢です。
夜尿症はこんな治療を行います
まずは生活指導から始めます
- 便秘を改善しましょう
- 膀胱と腸は隣り合っており、便秘によって腸が膨らみ、膨らんだ腸によって膀胱が圧迫され、夜尿しやすくなるということがあります。便秘を解消して膀胱容量を増やすことで、夜尿症の頻度が減少します。
- 食事の味付けは薄めにしましょう
- 食事の味付けが濃いと、摂取する塩分量が増え、水分が余計に欲しくなります。水分量はそのまま尿量を増やしますので、食事の味付けを薄くすることは重要です。家族の理解と助けが必要な治療法となります。
- 夕方からの飲水量を減らしましょう
- 夕方以降の摂取水分量は、睡眠前に排尿できなければ、夜尿となってしまうことが多いです。一日に必要な水分量を、できるだけ午前中から日中夕方以前に飲み切ってしまうのが効果的です。
- 寝る前の排尿を徹底しましょう
- 夜間睡眠中の尿量を少しでも少なくするために大切なことです。
- 入浴はゆっくりしっかり温まりましょう
- 体が冷えると夜尿症が悪化することが多いのは、汗をかかないため、体内水分がそのまま尿量を増やしてしまうことと、冷えは膀胱を収縮させることが挙げられます。気温が下がってくる秋から冬は、入浴の時間をしっかりとって、体を温めることが大切です。
- 夜尿(排尿)日記をつけましょう
- 摂取水分量、排尿時刻、排尿量、夜尿の時刻、夜尿の量などを記録します。夜尿をする時刻が朝に近づくと、治っていっているという目安にもなります。
アラーム療法も効果的です
シーツや下着に水分センサーを装着し、濡れたらアラームが鳴ります。夜尿症は、膀胱に尿が溜まったことを感知した脳が、睡眠中にも関わらず、排尿指示を出してしまうことで起こります。アラームによって繰り返し起きることで、脳が睡眠中は排尿指示を出していけないことを覚えてくれます。
しかし、睡眠中は成長ホルモンの分泌が盛んな時間で、毎晩起きることは子どもの成長に悪影響があります。また、睡眠中は尿を濃くして尿量を減らす指令を出す、抗利尿ホルモンが分泌される、夜尿症治療においても大切な時間です。これらの弊害に優先してアラーム療法の効果が利益となっています。このため、3ヶ月たっても治療効果が見られないときは、アラーム療法以外の治療法を行います。
薬物治療も行います
- 抗利尿ホルモン剤
- 睡眠中の尿量を減らすため、尿を濃く作る指令を出すホルモンを補充します。
- 抗コリン剤
- 過活動膀胱の場合に処方されます。排尿を抑え、膀胱容量を大きくしてくれます。
- 三環系抗うつ薬
- 睡眠中の排尿時に目が覚めやすくなります。また、尿量を少なくする働きもある薬です。
夜尿症は専門医で治療できます
放っておいても自然に治るという考え方も根強い夜尿症ですが、膀胱の発達を促す、抗利尿ホルモンの分泌を促すといった治療は、自然治癒よりも早く効果が出ます。夜尿症は、小児科や泌尿器科で治療できます。患者さん(子ども)本人や家族の負担が出てきた時は、専門医での治療を検討してみてはいかがでしょうか。