この記事の監修ドクター|久保田 亘先生(宮川クリニック)
夜尿症の治療を受けたいと思っても、どのような流れで行われるのか、気になるのではないでしょうか。治療を始める前の問診や検査などを見ていきましょう。
こんなときは医療機関を受診!
こんなおねしょは夜尿症という病気です
大きくなるとおねしょをしなくなるのは、5歳頃を目安に、睡眠中の膀胱容量が増えて、夜間に作られる尿を溜めておけるようになることと、尿の産生に関わる抗利尿ホルモンが充分に分泌されるようになるためです。
このため、5歳を超えて、おねしょが続く場合は、膀胱の未発達や、抗利尿ホルモンの分泌異常が考えられます。他にも、腎臓病など隠れた病気が原因になってケースもありますし、何よりも患者さん(子ども)本人の心の負担が大きいことから、夜尿症という病気として医療機関で治療をすることは、とても効果的です。
夜尿症の初診はこんなことを行います
- ①問診
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・身長と体重
・夜尿(おねしょ)の回数や頻度
・一日の水分摂取量
・尿崩症や腎臓病の家族の有無夜尿症を引き起こす病気が隠れていないかを調べます。
- ②尿検査
体の全体的なデータが得られることと、糖尿病や膀胱炎が隠れていないかを調べます。
- ③血液検査
肝臓や腎臓の機能異常、造血機能の異常がないか、調べます。また、薬物治療を行う前の状態を確認するためにも必要な検査です。
- ④次回の診察までに行うこと
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・昼間の尿の限界がまん量
・朝一番の尿量膀胱の限界容量や睡眠中に作られている尿量、濃さを調べます。
次回の受診ではこんなことを行います
- 尿量測定の結果を確認します
- 膀胱容量と睡眠中に作られる尿量の関係を調べて、夜尿症のタイプを見つけます。
- 超音波検査
- 夜尿症の原因となる腎臓や膀胱の奇形がないか、膀胱内の結石や残尿がないかを調べます。
- MRI
- 頭部MRIでは、抗利尿ホルモンの分泌指令を出す下垂体の異常がないか、腰部MRIでは、夜尿症の原因となる二分脊椎の有無を調べます。
- 血中抗利尿ホルモン検査
- 睡眠中に作られる尿量が過剰である場合、尿崩症が疑われますので、血液中の抗利尿ホルモンの量を調べます。
- 脳波検査
- これまでに熱性けいれんを起こしたことがある患者さんは、夜尿症の薬物治療で副作用が起こることがありますので、脳波の検査を行います。
- 心理検査
- 緊張などのストレスは膀胱を収縮させますので、夜尿症を引き起こすストレスがないか、あるいは、夜尿症によるストレスがないかを調べます。
夜尿症治療は生活改善から始めます
- 水分摂取は午前中から昼過ぎまで
- 一日に必要な水分量を、午前中から昼過ぎで摂取します。午後はできるだけ水分をとらず、睡眠中に作られる尿量を少なくします。
- 就寝前の排尿を徹底します
- 睡眠中の尿量をできるだけ少なくするために必要なことです。
- 便秘を改善しましょう
- 膀胱と腸は隣り合っていて、便秘をすると腸が便で膨らみ膀胱を圧迫するため、膀胱の容量が減ってしまいます。子どもの便秘は気づきにくいこともあります。便秘を解消すると膀胱容量が増し、睡眠中に溜めておける尿量が増えます。
- 食事の味付けは薄くしましょう
- 味付けの濃さは塩分量に比例します。取り込む塩分が増えるとのどが渇き、余計に水分が必要になります。
- 夜尿(排尿)日記をつけます
- 飲んだ水分の量、排尿回数、排尿時刻、排尿量、夜尿(おねしょ)の時刻、夜尿の量などを記録します。
夜尿症は専門医へ
夜尿症の治療前に行う検査などを見てきました。夜尿症は、膀胱容量の不足と抗利尿ホルモンの不安定さが原因であるケースがほとんどですが、原因となる病気が隠れていることもあります。その病気の可能性を排除することが、検査の目的です。
夜尿症は、患者さんには恥ずかしさや自信喪失など、心の負担になる病気ですが、家族の負担も大きい病気です。気になる場合は先延ばしにせず、夜尿症専門医を受診しましょう。