アレルギー疾患を診療する専門医、アレルギー専門医について
アレルギー専門医は、アレルギー疾患を診療する専門医です。アレルギー疾患は、人の体が外からの刺激や菌、ウイルスに負けないために備わっている免疫機能が異常を起こすことで起こる疾患です。皮膚や粘膜で起こる症状が主ですが、それらは体中にありますので、全身症状となることも多く見られます。症状の現れ方もさまざまですので、幅広い視野と高い水準の専門知識が必要とされます。
アレルギー専門医になるには厳しい審査があります
アレルギー専門医になるには、高い水準の専門知識はもちろん必要ですが、何よりもアレルギー疾患の患者さんを多く診療していることに重点を置いて認定の可否が決まります。荒れる儀専門医を認定する日本アレルギー学会は、専門医認定試験の受験資格を特に厳格に定めており、診療した患者さんの人数や指定された研修施設での診療を経験した年数が、まず問われます。
その上で、アレルギー疾患についての学会発表や論文発表、学会参加回数のみが、認定試験を受験することができ、合格して初めてアレルギー専門医を名乗ることができるのです。
アレルギー疾患とは
人の体は、常に外からの刺激、菌やウイルスの侵入に晒されています。そのため、体に入り込んだ異物を攻撃して排除する働きが備わっており、これを免疫機能と呼びます。風邪をひいて発熱するのは、免疫機能がウイルスと戦っているからであり、ケガをした部位が膿むのは、侵入した菌を底で攻撃しているからです。
しかし、この免疫機能が異常を起こしてしまうことがあります。異常を起こした免疫機能は、通常であれば小さな反応を示すあまり危険でない異物に、過剰反応を示し、自分の体をも傷つけてしまうようになります。この状態がアレルギー疾患です。
アレルギー疾患の原因となる物質のことを、アレルゲンと呼び、主なものは、卵や鶏肉、小麦やナッツ類などの食品、花粉、ハウスダスト、金属やハチ毒などです。
アレルギー疾患は大きく2つに分けることができ、即時型アレルギーと遅延型アレルギーに分けられますが、他にもアレルギー疾患が起こる反応経路があることもわかっています。
即時型アレルギー
花粉症や気管支喘息、食品やハチ毒によるアナフィラキシーなどが即時型アレルギーに分類され、アレルゲンに接触してから、数分から半日ほどの比較的短時間でかゆみや咳、鼻水などの症状が現れます。
遅発型アレルギー
アレルゲンに触れてから、1日から数日後に症状が現れるので、アレルギー疾患であると気づかない場合、原因物質が特定しにくい場合などがあります。接触性皮膚炎などが代表的です。気管支喘息などは、即時型アレルギーと遅発型アレルギーが重複して発症することもあります。
アレルギー疾患にはこんなものがあります
・気管支喘息
気管支とは、喉の奥の気道が左右の肺へ2つに分かれている部分を指します。左右に分かれた気管支は、さらに細く枝分かれして、この部分は細気管支と呼びます。気管支喘息はこの気管支の部分で、アレルゲンに反応して炎症が起き、ゼイゼイといった喘鳴、咳、息苦しさなどの症状が慢性的に続きます。
また、発症の原因はアレルゲンであっても、気候や気圧の変化、ストレスや飲酒などでも悪化することがあります。子どもの小児気管支喘息は、思春期ごろには治癒することが多いですが、成人してから再発する患者さんが多く見られます。
・アレルギー性鼻炎
鼻の粘膜がアレルゲンに反応して、かゆみや炎症が生じ、鼻水や鼻詰まり、くしゃみなどが症状として現れます。花粉症の症状の多くはこのアレルギー性鼻炎で、目のかゆみは後述するアレルギー性結膜炎が合併しています。
アレルギー性鼻炎は、即時型アレルギーと遅発型アレルギーが重複して起こっていることがわかっています。
・アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎は、もともと肌のバリア機能が弱い人に起こりやすい、皮膚の慢性的な炎症で、アレルギー疾患とは限りませんが、アレルゲンが原因で起こることも確かにあります。皮膚にかゆみや湿疹が慢性的に起こり、かゆくてかいてしまうと症状が悪化します。
・アレルギー性結膜炎
眼の粘膜にアレルゲンが反応して、かゆみや炎症が起こります。花粉症の眼のかゆみはこの症状です。
・食物アレルギー
食品をアレルゲンとして起こるアレルギー疾患で、症状は、じんましん、かゆみ、吐き気、嘔吐、下痢、喘息などと幅広く現れます。
・薬物アレルギー
特定の薬物をアレルゲンとして発症します。かゆみや発疹、めまいなどの軽いものであれば、薬の服用や使用を中止すれば収まりますが、高熱や全身への発疹、発疹が内部に及んで多臓器不全が起こる、重症のケースもあります。薬物アレルギーによる発疹を、薬疹(やくしん)と呼びます。
・アナフィラキシー
アレルゲンに対する反応が、急激かつ強く現れることを指します。原因は食品や薬物、ハチ毒やゴム(ラテックス)などが多く見られます。じんましん、腹痛、嘔吐、呼吸困難などが主な症状で、重症化すると、血圧低下や意識混濁が起こり、命の危険があります。
アレルギー専門医はこんな治療を行います
①アレルゲン回避
症状の原因となるアレルゲンを避けて生活します。そのためには原因となるアレルゲンを特定する必要があり、パッチテストやスクラッチテストを行います。
②症状緩和のための薬物療法
現在出現している症状を速やかに軽減するための外用薬、内服薬を処方します。効果の強い薬が処方されることが多いですので、患者さんへ使い方や効果の現れ方の説明を行います。
③患者さんに病気の理解と治療継続の大切さを理解してもらう
アレルギー疾患は、強く現れた症状が治まっても、体内での免疫機能の反応は続くことがわかっています。そのため、症状が消えても行わなければならない治療があり、長期的に治療を継続することで、強い症状の発現を抑え、予防することができます。このことを患者さんに正しく理解してもらうこと、症状が治まっても治療を続けることの大切さを知ってもらうことが、アレルギー専門医の大切な役割です。
④長期的な薬物療法で炎症反応を抑える
強く現れた症状が治まっても、免疫機能はアレルゲンを記憶しており、体内の炎症反応は消えたわけではありません。そのため、炎症を抑える薬を長く服用する必要があります。この長期的な治療が、アレルギー疾患の再発を防ぎ、患者さんの生活の質を向上させることができるのです。
原因がはっきりしない症状はアレルギー専門医へ
アレルギー疾患には、アレルゲンと接触して短時間に症状が発現することもあれば、数日経ってから発現することもあります。気にある症状があり、原因がはっきりしない場合は、アレルギー専門医へ受診すると良いでしょう。