この記事の監修ドクター|髙木優樹先生(糀谷こどもクリニック)
子どもの低身長は、ホルモンの異常が原因で起こることがあります。どんなホルモンが原因で、どんな病気や症状が起こるのでしょうか。
低身長の原因になるホルモンの異常とは
身長を伸ばすホルモンって?
骨を伸ばし、身長を高くするのは成長ホルモンの役目です。また、身体の正常な発育や発達に欠かせないのが甲状腺ホルモンです。どちらも身長を伸ばすために大切なホルモンです。
2つのホルモンの異常で起きる低身長って?
成長ホルモンの分泌が足りなくなって起こる低身長を、「成長ホルモン分泌不全性低身長症」と言います。また、甲状腺ホルモンの分泌が足りなくなって起こる低身長を、「甲状腺機能低下症によって起こる低身長」と言います。2つの低身長を詳しく見て行きましょう。
成長ホルモン分泌不全性低身長症とは
8割以上が原因不明
成長ホルモンが不足して起こるのがこの、成長ホルモン分泌不全性低身長ですが、原因は大きく分けて2つです。1つ目は脳腫瘍などによって成長ホルモンを分泌する脳下垂体が障害を受けて、成長ホルモンがうまく分泌できなくなるもの。
もう1つは原因不明です。まれに遺伝によるものもありますが、この成長ホルモン分泌不全性低身長の診断がおりている患者さんのうち84%が、原因不明の成長ホルモンの不足です。
低身長以外に代謝異常も起こります
低身長以外の症状には、代謝の異常で太りやすいことが挙げられます。これは、成長ホルモンが身長だけでなく、全身の代謝を促して、エネルギー産出を調整する役割があるためです。
成長ホルモン分泌不全症低身長の治療とは
人体が分泌する成長ホルモンと同じ成分を、注射で補います。自宅で自分や家族が毎日就寝前に注射して、治療を行います。ホルモン補充を始めた1年目が、最もよく身長が伸びるとされています。また、成長ホルモン分泌不全症である子どもが、成長と共に分泌が正常になって行くケースも見られます。いつまで治療を行うか、あるいは成人になっても成長ホルモン治療を続ける必要があるかどうかは、医師とよく相談すべきです。
甲状腺機能低下症による低身長の治療とは
内服薬で甲状腺ホルモンを補充します。
甲状腺機能低下症による低身長とは
先天性のものと後天性のものがあります
甲状腺ホルモンを分泌する甲状腺が、何らかの原因で働きが悪くなり、甲状腺ホルモンが不足して起こる低身長です。先天性のものが8割を占めています。後天性のものは、小学校低学年以降に発症するケースが多く見られます。
甲状腺ホルモンの働きとは
成長に関わる以外に、全身の細胞で新陳代謝を担っています。脂肪や糖からエネルギーに変換するホルモンです。また、交感神経を刺激する役目もあり、神経を活性化します。乳幼児期の脳の発達にも極めて重要です。
低身長以外の症状
代謝の働きが悪くなるためにむくみや便秘などが起こります。また交感神経は刺激され続けると疲れてしまいます。そのため、だるさや眠気、イライラややる気の欠如などが主な症状です。先天性の甲状腺機能低下症の場合は、発達の問題や遅れも見られます。
甲状腺機能低下症の場合、症状がゆっくりと進むので気付きにくく、また怠けている、やる気が無いなどと誤解されやすく、理解されにくいと言う課題があります。早期発見が難しい病気です。
治療には適した時期があります。早めの受診を!
ホルモンの異常で起こる低身長の治療には、ホルモン補充療法が多く行われます。これらの治療法には適した時期があり、早期に治療を開始するほど効果が期待できます。一方で成長ホルモンの場合、思春期に入る前までに治療を開始しないと効果があまり期待できません。
子どもの身長が気になっている人は、迷って時期を逃す危険もあることを考慮して、早めの受診をお勧めします。子どもの低身長は小児内分泌科専門医へ。