低身長の原因の多くは遺伝や体質によるものと一般的には言われています。低身長を引き起こす病気にはどのようなものがあるのでしょうか。
- 目次
低身長を引き起こす病気
低身長を引き起こす病気をいくつかに分類してみましょう。
①ホルモンの分泌特異によるもの
成長に関与しているホルモンが分泌を阻害されることによって低身長になることがあります。成長に関わるホルモンの代表的なものとしては甲状腺ホルモンや成長ホルモンなどがです。
視床下部からの命令を受けて、下垂体からは様々なホルモンが分泌されますが、成長ホルモンもその一つです。つまり成長ホルモンの分泌の調整は下垂体が行っていることになります。
しかし、その下垂体が阻害されると成長ホルモンも分泌されないため低身長を引き起こします。成長ホルモン分泌不全性低身長症がこれに当たります。下垂体は脳腫瘍などによって阻害されたり(下垂体腺腫)、出生時に下垂体が傷ついてしまったり(下垂体茎断裂)して阻害されます。
同様に甲状腺ホルモンの分泌が阻害されても低身長を引き起こします。甲状腺の機能が低下するために分泌不全を呈する疾患です。橋本病などの甲状腺機能低下症などが挙げられます。これらは分泌不全が原因になっているため、ホルモンを外部から補充する(経口投与や注射など)ことによって低身長を改善することが出来ます。
②染色体の特異によるもの
染色体の特異によって低身長を引き起こす病気にはターナー症候群とプラダー・ウィリー症候群などが挙げられます。ターナー症候群は、通常であれば女性には2本あるはずのX染色体が、一部が欠損していたり、そもそも1本しかなかったりする病気です。バランスの取れた低身長が特徴的で他にも性腺機能の未発達(卵巣の発育不全など)であったりします。
プラダー・ウィリー症候群は15番染色体の変異によるもので、ターナー症候群と同様に低身長だけでなく、性腺が未発達になります。
③骨や軟骨の特異によるもの
骨や軟骨そのものに特異があるために低身長になります。代表的なものとしては軟骨異栄養症が挙げられます。軟骨異栄養症とは軟骨無形成症と軟骨低形成症の総称です。体幹部に比べて四肢が短いためアンバランスな低身長を呈し、この点においてターナー症候群とは異なります。
遺伝性疾患になりますが、突然変異によっても生じることもあり、両親や兄弟が発症していなくても、突然発症することもあります。治療方法としては、成長ホルモンを補充するという内分泌的な治療方針の他に、骨延長術などの整形外科的な治療法もよく選択されます。
④臓器阻害によるもの
ヒトは体外から栄養を取り込んで成長します。この過程において重要な役割を担っているのは心臓や腎臓、肝臓などです。これらの臓器に何かしらの特異があると、体は栄養を十分に取り込むことが出来ないので低身長をきたします。例えば、腎臓で言えば、小児の慢性腎不全が挙げられます。
これらの疾患は、低身長の検査をしたことで、偶然発見されるということも多いです。治療方法としては、低身長の原因の根本である臓器の方の特異治療を行います。治療することによって臓器阻害が改善され栄養を取り込むことができれば、身長が伸びることが期待できます。
以上、低身長を引き起こす病気について見てきました。これらからも分かるように、成長を促すにはホルモンや遺伝子、骨、内臓などの様々な因子が関わっているため、低身長の原因にも様々な理由があり(主にそれらの阻害)、大半は治療によって改善できるものになっています。子どもの低身長が気になるようでしたら、専門医に相談しましょう。