正しく知ろうアレルギー!

正しく知ろうアレルギー!

この記事の監修ドクター|中村 俊紀先生(なかむらこどもクリニック)

年代別のアレルギーに関する「原因・症状・治療方法」についてご紹介します。

新生時期から6か月位までのアレルギー疾患

乳児

この時期に問題となるのは、アトピー性皮膚炎です。痒みを伴う湿疹がなかなか改善しないという事でご相談を受けますが、北は北海道、南は九州の7地区の4か月健診のデータでは、おおよそ10人に1人が罹患していました。

原因

皮膚は体内の水分が蒸発しすぎないように保持する機能と異物が体内に入ってくるのを妨げる機能を担っており、それら機能をバリア機能と呼びます。このバリア機能が弱いお子さんがアトピー性皮膚炎を発症しやすいと考えられています。皮膚に炎症が起きると湿疹という状態になります。体内に入ろうとする異物を排除するために炎症が起こるので、湿疹が起こること自体は正常な反応ですが、本来は一時的なものです。アトピー性皮膚炎を発症されるお子さんはバリア機能が低いため、ひっかくことや汗などのちょっとした刺激でも炎症が起こるため、なかなか湿疹が収まらずに継続つまりは慢性化すると考えられています。

症状と診断

かゆみのある湿疹が慢性的に皮膚に認められますが、この時期には頭・頬・首を中心に認められることが多いです。湿疹は赤み、じゅくじゅく、ざらざら、鳥肌のようになっている、ごつごつなど色々な形をしています。 かゆみは、お子さんが痒いといってくれない時期ですので、仕草から推測します。よくお聞きするのは、抱っこしていると、ひっきりなしに顔をご両親の胸に擦り付けるなどです。

どうやって診断するの?
慢性的であること、痒みがある、特徴的な場所に湿疹があることなどが確認できれば、診断はそれほど難しいものではありません。すべての小児アレルギー疾患に共通することですが、一つの検査法(例えば、血液検査など)では診断することができません。このため、病歴をお聞きすることが重要です。

治療方法

スキンケアとステロイド軟膏が最も重要な治療となります。
スキンケアは“皮膚を清潔に保つこと”と“保湿をすること”の二つを指します。大事なことはよく泡立てた石鹸でゆっくりと顔も含めて全身を洗う事と、保湿されている状態にしてあげる事です。保湿剤の必要な量はお子さんの重症度により変わりますが、まずは標準的な方法を行って頂き調整をします。

スキンケアは湿疹予防になりますが、炎症を抑える効果はありません。このため、その効能を持つステロイド軟膏を使用します。ステロイドというと副作用が気になると思いますが、内服による副作用と混同している方がいらっしゃいます。塗布により、この年齢で起こる副作用は原則一過性です。しかし、私たちも副作用は最低限にしたいため、副作用を起こしにくい管理をお勧めしています。具体的にはステロイド軟膏による副作用が起こる頻度は、塗布量と塗布期間に関連するため、まずは最初にしっかりとした量のステロイド軟膏を塗布し、十分に湿疹が改善した後に、徐々に塗布回数を漸減し、最低量で湿疹がコントロールできるところを探ります。このような段階的な減量を経ずに塗布をやめてしまうと、湿疹はほぼ確実に再燃します。するとステロイド軟膏を始めの最も多い量から再開する必要があります。結果、副作用の頻度も高まりますので、最初の治療段階でしっかりと軟膏を塗布し、その後最低量で維持することが副作用対策として重要です。

保育園時期の起こるアレルギー疾患

食事をする子供たち

集団生活が始まる時期に最も問題となるのは食物アレルギーです。平成26年に東京都が3歳児約3000人を対象に行った調査では、医師に食物アレルギーと診断されたことのある児は17%、過去1年間にアレルギー症状を認めた児は10人に1人いらっしゃったことが報告されています。

原因

食物アレルギーがなぜ発症するのか、すべてが判明している訳はありません。しかし多くの研究の成果により、“離乳食の開始時期の遅れ”と“皮膚から感作”を獲得してしまう事が原因として考えられています。

現在までに鶏卵・落花生・牛乳に関しては、乳児期から摂取を開始することにより、アレルギー発症を予防できる可能性が示されています。その他の食物に関してはまだその効果は示されていません。しかし、少なくとも特定の食物の摂取を遅らせる事にアレルギー発症を予防する効果がないと考えられています。

私達の環境の中には実は沢山の食物のタンパク質が含まれています。湿疹などの皮膚の状態が悪いと、タンパク質が皮膚についた際に、容易に浸透してしまい、異物として見なされ感作が起こります。感作が起こったからと言って必ずしも食物アレルギーを発症するわけではありませんが、何らかの機序を経て発症されます。
*感作とは…食べ物に対する対してアレルギー反応を起こす前段階の状態。

症状と診断

食物アレルギーは幾つかのタイプがあり、特徴的な症状は異なります。この時期に問題となる食物アレルギーは即時反応と言って、原因となる食べ物を摂取してから概ね2時間以内、多くは30分以内に症状が出現します。出現する症状は多彩で、皮膚の発赤・膨疹や呼吸困難・アナフィラキシー・アナフィラキシショックなどを呈します。多くの方は皮膚症状などの軽症の症状のみで終わることが多いですが、極めてまれに命に関わるほどの重篤な症状を呈することがあるので、油断できません。症状は数時間で落ち着くことが多いですが、強い症状を呈した方は一旦落ち着いたにも関わらず症状が再燃することがあり、経過観察のために入院が必要となります。

食物アレルギー症状

どうやって診断するの?
食物アレルギーの診断は食物を食べて出現した症状を詳しくお聞きすることから始まります。どのように調理された食物をどれだけの量を摂取し、摂取後どのくらいの時間で、どんな症状が出てきたのかをお聞きし、原因食物を推測します。血液や皮膚を用いたアレルギー検査は感作の状態を確認することはできますが、感作されていても安全に食物摂取できるお子さんは沢山いますし、検査では検出できないタイプの食物アレルギーも存在します。このため、病歴と検査結果が合致しているかが、診断の決め手になります。ここまで、診断が確定しない場合には、食物負荷試験と言って、疑いのある食物を食べて症状が出現するかどうかを確認します。
食物負荷試験は一見大変な検査なので、とりあえず、除去しておこうという気持ちになりがちです。しかし多くのお子さんで、誤食とよばれる、間違えて除去していたものを食べてしまうことが報告されています。
食物負荷試験でどんな症状がどのくらいの摂取量が出るのか分かると自ずとどの程度のリスク管理をすべきか明確になります。お子さんの安全を守るためにも、病歴やアレルギー検査で明確な診断が得られない場合には“食物負荷試験”を受けることをお勧めします。
年齢的制限はありませんが、アレルギー検査ですから何かしらの症状が現れ、その軽度重症度にかかわらず、お子さんに負担がかかる事は確かです。そのため安全性を確保してから初めて成り立つ検査といえます。
私が診療していた大学病院では累計で1万件ほどの試験を行っていましたが、アレルギー症状を呈しまう方の頻度は約30%、200人に1人くらいの頻度で、アナフィラキシーショックを呈す方がおられました。このため、当院では事前に患者さんのリスクを評価し、リスクが高い方には、安全性を確保するために専門病院へご紹介します。
*食物負荷試験をするかしなかい迷ったら、まずはご相談ください。

治療方法

乳児期に発症した鶏卵・小麦・牛乳アレルギーでは、耐性獲得と言って30〜60%位の方が自然に食べられるようになると考えられています。しかし、それ以外の食物や学童期になってもアレルギー反応を起こしてしまう方は、耐性獲得せずに一生除去を継続する必要があります。最近では鶏卵・牛乳・小麦・木の実類では食物経口免疫療法と呼ばれる原因食物を少量から摂取して、耐性獲得を目指すという治療法が一部の専門施設で行われています。これまで除去一辺倒であった治療を大きく変化させるとても希望が持てる治療である一方、治療中に重篤なアレルギー反応を起こす可能性があり、救急診療設備が整った専門施設で行うことが関連学会から推奨されています。私が勤務していた大学病院では、累計約300名の方が同治療を行っており、副作用のデータなども揃いつつあります。希望される方はご紹介させて頂きます。

食物アレルギーによりアナフィラキシーを起こした方への治療はアドレナリンの筋肉注射が最も確実な治療となります。抗ヒスタミン薬やステロイド薬が投与されることもありますが、抗ヒスタミン薬は皮膚症状・ステロイド薬は前述の症状再燃を予防する目的で投与されます。このため、呼吸困難やアナフィラキシーなど重たい症状を起こしてしまっている場合には、躊躇せずにアドレナリン投与します。
エピペンはアドレナリンの自己注射液、つまり患者さん自身で注射できるお薬です。自分で注射するのは怖いから病院に行ってから打ちたいと思うかもしれません。しかし、食物アレルギーでは何らかのアレルギー症状が出現してから5-10分程度で非常に重篤な症状に進展することがあるため、病院到着前に治療開始する方が患者さんにとってより安全です。一方で、実際にはエピペンを打つべき症状があっても、なかなか投与できないご両親の方が多いことも事実です。当院では、エピペンを処方する場合には、打ち方・打つタイミングを含めてご指導します。

小学生から中学生に起こるアレルギー疾患

笑顔の子供たち

気管支喘息は学童期にかけて患者さんの数が増えるアレルギー疾患です。毎年10月頃になる発作と呼ばれる気道が急に狭くなることによって、呼吸困難を来すかお子さんが増えます。同月に厚生労働省が行った調査によると、気管支喘息発作による入院数は1990年代には約6000人でした。現在は治療方法の進歩にともない、その数は減少傾向ですが、2017年には1000人程度が入院を要したと報告されています。

原因

気管支喘息は空気の通り道である気道に、ダニやほこりなどに対するアレルギーによる炎症が起こることで発症する疾患です。約半数の方は軽症の方で、年に数回発作が起きるだけですが、重たくなると気道が過敏になり、アレルゲン(アレルギーをおこす物質)以外の刺激、例えば運動や冷たい空気を吸っただけで発作を起こしてしまいます。さらには気管支喘息のお子さんではお風邪をこじらせて、気管支炎などを起こしやすいとも言われています(ただし、新型コロナ感染症に関しては幸い喘息のお子さんが悪化しやすいという報告はありません)。

症状と診断

喘息のお子さんは発作がない時には、健常のお子さんと変わりありません。発作を起こすと喘鳴と言って、ヒューヒューといった主に、息を吐くときに笛を吹くような音がしますが、これは気道が狭くなるためにおこります。弱い発作(小発作と呼びます)では、非常に小さな音ですので、聴診器を使わないとわかりません。ある程度悪くなると聴診器を使わず聞こえますが、更にひどくなると、空気が通らなくなるので逆に音がしなくなることがあります。そのような状態になるととても苦しいので、お子さんは横になって寝られなくなったり、肩を上下させたりして呼吸をしようとします。

どうやって診断するの?
診断には喘鳴を繰り返していることを確認する必要があります。概ね3回以上の喘鳴があると喘息と診断されます。他の特徴的な所見としては気管支拡張薬を使用するとしっかりと効果を認める事が多く、今まで苦しそうだったお子さん吸入をすると、急に走って遊び始めるなどを経験します。 気管支喘息は典型的な症状を確認できれば診断はそれほど難しくはありません。一方で、症状が確認できないといつまでも診断できません。このため、喘息が疑われているお子さんでは、調子が悪いときに受診頂き、診察を受けて頂くことが重要です。小発作では夕方になると改善することがあるため、午前中の受診がお勧めです。

治療方法

気管支喘息の治療は発作を起こさないように予防することが重要です。環境整備・発作予防薬・適切な運動が治療の3本柱です。
環境整備で最も重要なことはお部屋の中のダニを減らすことです。日本は高温多湿でダニの量が北欧などに比較して多いことが知られています。ダニはふかふかな場所を好み、特に寝具やぬいぐるみなどに多数存在します。その量は居間の約5倍です。1匹のダニは40-80個くらいの卵を産みます。そして、なんと4週間ほどで成虫になってしまいます。なにもしないとダニに包まれて寝ている状態になるので、1週間に1回程度寝具を掃除機掛けしましょう。専用の掃除機を用いる必要はありませんが、布団は1m2あたり20秒程度を目安にゆっくりと掃除機をかけます。ダニは爪で吸引されないように頑張りますので、ゆっくりかけることが重要です。洗うことも有効なので、シーツなど洗えるものはこまめに洗濯しましょう。
次に発作予防薬ですが、主には吸入ステロイド薬と抗アレルギー薬を用います。吸入ステロイド薬は安全でとても効果があるお薬ですが、適切な吸入方法で使用しないと十分な効果が得られないどころか、副作用が増えてしまいます。また、発作予防薬は、概ね2-3か月で喘息のコントロール状態を評価して、調整することが必要です。
運動は乾燥した空気を吸うと発作を起こすお子さんがいらっしゃるため、水泳が推奨されています。しかし、しっかり治療すれば、気道の過敏性も低下しますので、多くのお子さんが自身の好きなスポーツを楽しむことができます。過去にはスケートで金メダルを取った選手がいらっしゃいましたね。

発作の治療は小発作の場合には気管支拡張薬の吸入、それ以上の発作の場合には、ステロイド薬の内服もしくは静脈注射します。発作は明け方に悪化することも多く、救急医療機関を受診すべきどうか迷われることが多いと思います。このとき、強い喘息発作のサインを知っておくと便利です。
強い発作の観察ポイントは生活の様子・全身の様子・呼吸や脈の様子など3つに大別され、最もわかりやすいのは、話せない・歩けない・横になれない・眠れないなど生活の様子です。全身の様子は顔色が悪いやボーとしているや逆に興奮しているなどです。そして、呼吸は遠くからでも明らかにゼーゼーしている、息を吸うときにのどや肋骨の間などがはっきりとへこむなどです。手元に気管支拡張薬があれば吸入してもよいですが、

1)ない場合
2)状態がすぐに改善しない
3)いったん改善しても数時間で元の状態に戻ってしまう

などの場合には、躊躇せず病院受診をしましょう。

まとめ

アトピー性皮膚炎

基本の治療はスキンケアとステロイド軟膏塗布です。
スキンケアで湿疹予防。
ステロイド軟膏は湿疹を抑える!

食物アレルギー

離乳食の開始時期は5-6か月から、心配だからと言って遅らせないで。
適切な診断をして、必要最小限の除去へ。

気管支喘息

発作を起こさないように予防することが重要。
強い発作の時には救急受診をしましょう!