この記事の監修ドクター|金澤 健太 先生(かなざわクリニック)
糖尿病は今や「国民病」と言えるほどに、たくさんの患者さんがいる病気です。とても身近な病気ですが、早期発見する方法はあるのでしょうか。
糖尿病ってどんな病気?
糖尿病とは、血糖値が高い状態が続く病気です。血糖値とはその名の通り、血液中の糖(ブドウ糖)の濃度の事です。血糖値は食事の後や空腹時などで多少変化しますが、それをある程度一定に保つ役割をしているのが、インスリンです。
インスリンはすい臓で作られるホルモンで、食事をして血糖値が上がるとたくさん分泌され、血糖値をコントロールしてくれます。このインスリンの働きが正常に行われず、血糖値が下がらず高いままだと、糖尿病と診断されます。
糖尿病は合併症が怖い!
血糖値が高いまま維持されていると、全身に様々な問題が現れてきます。それがいわゆる糖尿病の合併症です。糖尿病で怖いのが、この合併症なのです。その中でも特に腎臓、眼、神経に現れる合併症を三大合併症と呼んでいます。
糖尿病は「サイレント・キラー」とも呼ばれる、たいへん恐ろしい病気です。しかし、きちんと治療を受け、コントロールすれば、直接死につながるような病気ではありません。まずは正しい知識を得て、予防や早期発見に努めましょう。
こんな症状は糖尿病のサイン!
糖尿病の初期症状は大変乏しく、わかりにくく、本人も気がつかないうちに病状が進行していることも少なくありません。以下のような症状が現れますが、非常にゆっくりと、少しずつしか現れないのが特徴です。
- 尿が多い
- 喉がよく渇く
- 疲れやすい、だるい
- 体重が急に減る
- 感染症にかかり易くなる
- 傷が治りにくい
- 昼間でも眠い
- 足がよくつる、又はしびれる
- よくお腹がすく
- 目がかすむ
- 皮膚の痒み
これらの症状に気がつき、合併症を引き起こす前に糖尿病である事を発見し、治療に取りかかれば深刻な問題にはなりにくいのです。
しかし、残念ながら糖尿病になっても血糖値がかなり高くならないと、症状に気がつきにくく、様々な合併症の症状が出てから気がつく事が大変多いです。つまり、気がついた時にはすでにかなりの高血糖になっていると言う事です。
また、上記のような症状で病院にかかる人は、自身の健康状態に気をつけている人が多く、実際糖尿病である人は少ない傾向にあります。それよりも、健康診断などで糖尿病の疑いがあると言われても、自覚症状がないためなかなか病院を受診しない人が多く、その間に体の中ではどんどんと障害が出ているのが現状です。実際の糖尿病患者数より、かなり多くの人が糖尿病になっているとも言われています。
糖尿病にかかりやすい人とは?
- 40歳以上の人
- 家族、特に両親が糖尿病である人
- 運動不足の人
- 肥満の人
- 妊娠中に糖尿病になった人
- 過度のストレスがある人
加齢と共に糖尿病患者数は増加傾向にありますが、近年は食文化の変化も影響し、10代でも糖尿病になる人が増えてきています。また、家族に糖尿病患者がいなくても、かかる人はいます。それを踏まえた上で、予防方法に話を進めましょう。
糖尿病の予防
運動
まずは日々の運動です。家でゴロゴロしてばかりの人は要注意です。今まで全く運動していなかった人は、軽い運動から始めて、徐々に増やしていきましょう。例えばウォーキングやストレッチがお勧めです。出来れば週3回以上は行いましょう。
食べる事や飲酒以外で、ストレスを発散出来る方法を見つけましょう。趣味がテニスやゴルフなど、体を動かす事でストレスを発散出来るのが理想です。スイミングなどの全身運動もいいでしょう。
わざわざ運動する時間が取れないほど忙しい人は、エレベーターやエスカレーターを使わず、階段を使ってみると、意外と運動になります。1人だと長続きしない場合は、家族や友人を誘うと、楽しめるかもしれません。
糖尿病とストレスには深い関係があります。人はストレスを感じると、血糖値を上げるホルモンが分泌されます。これらが分泌されると、血液中のブドウ糖濃度を上がります。ストレスを感じれば感じるほど、血糖値が上がり、それを抑える為にインスリンが分泌されます。
ストレスを繰り返し感じることで高血糖の状態が続き、すい臓はインスリンを作り続けて疲れ果て、糖尿病を引き起こしやすくなるのです。なるべく早い時期からストレス発散方法を見つけておく方が、糖尿病になりにくく、またなったとしても悪化しにくいと言えるでしょう。
食事
- 朝、昼、夜と3食きちんととりましょう
- 間食はなるべく控えて、時々少しは構いません
- 3食と間食の合計で1日の総カロリー内に収まるように、気をつける
- よく噛んでゆっくり味わう
- コーヒーや紅茶の砂糖は入れない方が良い
- 食物繊維をなるべく取り、外食は控えめに
- 外食するなら和食を選ぶ
- お酒はほどほどに
健康に過ごすためには日々の生活を見直す必要があるのです。
糖尿病の早期発見には検査が大切
糖尿病は自覚症状が乏しいために、日常生活で気がつくのはとても難しい病気です。糖尿病になっても症状が出るまでに5〜10年以上かかることもあるのです。ですから、会社の健康診断や病院などで定期的な検査を受ける必要があります。採血検査さえ定期的に受けていれば、糖尿病が悪化する前に、そして深刻な合併症を引き起こす前に、危険性に気がつくことができるのです。
検査を受けて糖尿病と診断された場合には、自覚症状が全くなくても、きちんと治療を始めましょう。糖尿病は自己判断が恐ろしい結果に繋がりかねない病気です。中途半端な知識や治療によって、悪化してしまう可能性もあります。必ず医師の診断のもと、正しい治療と自己管理の「継続」が大切です。焦らず、気長に前向きに取り組んでいきましょう。