糖尿病はこうして起こる

糖尿病はこうして起こる

この記事の監修ドクター|工藤 孝文先生(工藤内科)

糖尿病はどのようにして起こるのか、その原因について理解して生活習慣・食事を意識していきましょう。

糖尿病の患者数は多い

調査

厚生労働省の調査によると、糖尿病が強く疑われる人は、全国に約1000万人いると推計されています。このうち、患者さんとして通院し治療を受けている人は80%程度、診断はされていなくとも予備軍とされる人が残り20%を占めています。

糖尿病の可能性を否定できない人まで含めると、2000万人まで膨れ上がります。これは、全人口の12%、男性では16%、女性では9%。糖尿病はたいへん患者数の多い病気であることがわかります。

糖尿病とは血液中に糖が多くなる病気です

糖尿病とは、血液中の糖分が異常に高いまま維持されてしまう病気です。余分な糖分が血管を傷つけ、ダメージを与えてしまいます。血液中の糖の量は、インスリンというホルモンによって調整されています。このインスリンの分泌が不足するか、働きが悪くなってしまうことで糖尿病は起こります。

糖尿病は合併症が怖い!

 

胸が痛い男性

血液中の糖が多い状態が続くとさまざまな弊害が出てきます。血液中の糖によって血管が傷つくことは先に述べましたが、傷ついた部分は弱くなりますので、脳出血や心筋梗塞といった血管が破れる危険性が高まります。

糖尿病の三大合併症と言われるものに、糖尿病性網膜症、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症があります。それぞれ失明、壊疽による切断、腎不全といった、重大なリスクがあります。いずれも血糖値が高い状態が続くことで起こる病気です。

糖尿病の原因は大きく2つ

①膵臓の細胞が壊れてインスリンが不足して起こります(1型糖尿病)

血糖値を下げる働きをするのがインスリンという膵臓の細胞で作られるホルモンです。このインスリンを分泌する膵臓の細胞が壊されてしまい、インスリンが分泌されなくなって起こるのが1型糖尿病という種類の糖尿病です。

糖というのは甘いものだけに含まれるのではなく、炭水化物全般に多く含まれている成分です。食事で体内に取り込まれた糖によって、血液中の糖の量は急激に増えますが、これを細胞に吸収させることで血糖値を下げるのがインスリンの役割です。

このインスリンを作る膵臓の細胞が、なぜ壊されてしまうのかはよくわかっていません。人の体には、外から入ってくる菌やウイルスに対抗する免疫という働きがありますが、この働きが暴走して膵臓の細胞を攻撃してしまい、壊されてしまうのだと考えられています。

②インスリンの働きが悪くなって起こります(2型糖尿病)

糖尿病には大きく分けてもう1つの種類があり、2型糖尿病というものがあります。こちらは、糖尿病になりやすい体質に加えて、生活習慣が要因となって引き起こされるものです。要因となる生活習慣は、食べ過ぎや飲みすぎ、運動不足や肥満、ストレスなどです。

1型糖尿病は子どもや若い年代に多い種類の糖尿病ですが、2型糖尿病は中高年に多い糖尿病です。このため、2型糖尿病は生活習慣病の1つと考えられています。

2型糖尿病は生活習慣で起こる!

暴食する男性

例えば、食べ過ぎが続くと、膵臓は一生懸命インスリンを分泌しようとします。この状態が長く続くと、膵臓はだんだん疲れてしまい、インスリンを分泌する力が弱くなると考えられています。

また、運動不足の人や肥満の人では、インスリンの働きを妨げる物質が作られてしまい、このためインスリンは充分な量分泌されているのに、上手に働けないということが起こります。これをインスリン抵抗性と言い、糖尿病の原因となります。

精神的なストレスは、これに対処するため、エネルギーとなる糖を血液中に放出し、血糖値が上がることが知られています。継続したストレスは高血糖を継続させることになりますので、これも糖尿病の原因となります。

糖尿病のよくある誤解2つ

①甘いものの食べ過ぎだけが原因ではない!

 

砂糖とご飯

糖尿病は甘いものの食べ過ぎでなると考える人がいますが、そうではありません。糖尿病はインスリンの分泌不足や上手に働けなくなることで、血糖値が下げられなくなって起こる病気です。

糖は、甘いものだけでなく、炭水化物やたんぱく質、脂肪にも含まれています。どの栄養素も摂り過ぎれば糖尿病の原因となるのです。血糖値をあげる食品を食べ過ぎれば、糖尿病になってしまうと考えられます。

②太っていなければ糖尿病にはならない?

体重は標準で、体形も痩せているのに、糖尿病になることは意外に多くあります。痩せていても、運動不足の上に脂肪分の多い食事を続けていると、内臓には脂肪が蓄積してしまい、肥満と同じ状態になってしまうことがあるのです。つまりインスリン抵抗性です。

日本人は糖尿病になりやすい?

体質的に、欧米人は糖尿病になりにくく、日本人はなりやすい傾向があります。これは欧米の方が農耕文化の始まりが1万年前、日本を含むアジアでは3000年から3500年前であることに理由があります。

農耕が始まる前は、人類は狩猟による肉食を中心として、低糖質の食事に耐えられるように、糖質を脂肪に貯蔵する倹約型の体質を作り上げました。しかし、農耕が始まり、穀物からの糖質接種が増え、これに対応するように人類は体質改善を行います。

その結果、1万年かけて体質を高糖質の食事に対応できるよう変化させてきた欧米人に比べて、7000年ほど遅れて農耕を始めた日本を含むアジア人は、まだ高糖質の食事に慣れておらず、糖質を体内に貯蔵しやすいままなのです。

このため、欧米人は食べ過ぎると肥満になり、過度の肥満が糖尿病を引き起こすのに対して、日本人は肥満になる前に糖尿病になってしまうということが起こるのです。

糖尿病は早期発見と早期治療が大切です

診察

糖尿病は一度なってしまうと、元の健康状態に戻すのは難しい病気です。そのため、早期発見して、治療を早く始めることが大切です。健康診断などで血糖値が高めだと指摘されたら、そのままにしないでください。その段階から専門の医療機関を受診して、血糖値の改善に取り組むことが、悪化を防ぎ、合併症を防ぐ大切な手段なのです。