この記事の監修ドクター|日暮 雅一先生(ほどがや脳神経外科クリニック)
シヌクレインという特殊なたんぱく質が変性沈着したレビー小体によって引き起こされるレビー小体型認知症。特徴とされる幻視以外には、どんな症状があるのでしょうか。
認知症の分類
70種類はあるとされる認知症の中でも、一番発症数が多く5割を占めるのがアルツハイマー型認知症です。二番目に多く2割を占めているのがレビー小体型認知症、続いて1.5割の脳血管性認知症、残りはその他となります。
アルツハイマー型認知症は女性の発症が多いのが特徴ですが、レビー小体型認知症は男性の発症が多い病気です。
レビー小体型認知症の原因
レビー小体型認知症は、レビー小体という異常なたんぱく質の塊が脳の神経細胞に溜まって起こる病気です。レビー小体が大脳皮質を中心として蓄積すると認知症の症状が出現し、レビー小体型認知症と呼ばれます。
レビー小体によって神経細胞が障害されて認知症の症状が起こります。一方、脳幹部を中心に蓄積する場合は、パーキンソン病の症状が強く出現します。レビー小体の出現部位によって、症状も異なります。
レビー小体型認知症の症状はどんな特徴?
レビー小体型認知症で起こる特徴的な症状が5つあります。
- ①幻視や幻聴が繰り返し起こる
認知機能の低下も起こりますが、特徴的なものは幻視や幻聴です。はっきりして現実味のある幻視や幻聴が繰り返し起こります。虫や蛇などの嫌なものが部屋の中にいる、亡くなったはずの兄弟がいる、小人がいるなどさまざまです。誰かがラジオを聴いているなどの幻聴もあります。
幻視や幻聴に伴って異常行動なども起こります。そこにいないものに話しかける、追いかける、などです。患者さんにとっては見えているもの聞こえているものが現実です。否定せずに虫を追い払ってみせる、お客様が見えたけれどお帰りになった、など、話を合わせる柔軟な対応ができると良いでしょう。
- ②抑うつ症状
元気がない、気力がない、食欲がない、眠れないなどの抑うつ症状が出ることもあります。うつ病と間違えやすいので注意が必要です。
- ③日内変動
一日の中でも症状が重くなったり軽くなったりします。頭がはっきりしてしっかりしているときと、ぼーっとしているときがあります。日常動作もできるときとできないときがあり、周囲の柔軟な理解が必要です。
- ④パーキンソン病と似た症状
同じレビー小体が原因となるパーキンソン病と似た症状が出ます。身体が勝手に震える、動作がゆっくりになる、小股で歩く、筋肉がこわばる、バランス感覚が悪くなるなどです。よく転ぶようになるなど、ケガの心配が増えます。家具の配置や段差への配慮が必要です。
- ⑤睡眠時の異常行動
寝言が大きい、あるいは叫ぶ、寝たまま暴れたりするなどの行動が見られます。暴れたためにベッドから落ちてケガをするなどの問題も出てきます。ケガをしないように寝具の工夫をしてみると良いでしょう。幻視などのほかの症状に数年先行して出現することが多いので、夢遊病のような症状がある場合は、一度専門医に相談するとよいでしょう。
専門医と一緒により良いサポートを
これまでと違った日常生活に不安や戸惑い、いらだちを覚えるのは患者さんだけではなく、患者さんを支えるご家族も同じです。
レビー小体型認知症の特徴的な症状を知って、患者さんにはより良いサポートを、ご家族には病気への理解を深めることで余裕ある生活を。
気がかりなことやわからないこと、生活上の工夫や改善策の具体案を知りたいなどありましたら、迷わず専門医へご相談ください。