軽度認知障害（MCI）は認知症予備軍！早期治療が効果的

軽度認知障害は認知症のごく初期段階です

軽度認知障害（MCI）は認知症のごく初期段階です。認知症になる前の段階とも言えます。認知症と似た症状が出ますが、生活に助けが必要などの、認知症の診断基準は満たしていないので、正常範囲と認知症の間のグレーゾーンとも言われます。

軽度認知障害と診断された患者さんの約50％が、5年以内に認知症に移行することがわかっています。軽度認知障害の段階で対策をとらずに放置していると、認知機能障害が進行し、認知症へと移行する可能性が高くなるのです。

軽度認知障害は、発症を防ぐことのできる大きなチャンスともいえます。この段階は認知症に進行した後よりも治療効果が得られやすい時期でもあります。

軽度認知障害の症状と診断

認知症へ進行させないための治療とは

軽度認知障害の治療は、薬物治療よりも多方面からの働きかけや日常生活の改善、認知機能の訓練などが主に行われます。主なものを挙げてみましょう。

①食生活の改善

認知症の患者さんを調査すると、野菜や果物不足、魚よりも肉の偏食が目立つという報告があります。認知症への進行を予防するためには野菜や果物でビタミンCとE、カロチンをしっかりとる、魚を食べて不飽和脂肪酸を多くとることが大切です。

②運動不足を解消

適度な運動で脳の血流も改善されます。週に3日、1回30分ほどの有酸素運動が効果的です。有酸素運動とはウォーキングやジョギング、水泳やヨガなどで、運動強度は強くなくとも、継続して行う運動のことです。運動中によって、脳に限らず全身の血流が改善され、脳も活性化されます。

③睡眠を充分にとる

夜間に十分な睡眠を確保することが重要です。短い昼寝であればよいですが、長く昼寝してしまうと、夜間の熟眠感が低下します。また、朝は決まった時間に起床し、日光をしっかり浴び、日中はよく活動することも大切です。

④人との交流を増やす

人との交流を増やすことで、相手の表情から気持ちを考えたり、社会環境の中で予定を遂行することができ、脳の機能維持に効果的です。億劫に感じる方もいますが、日常生活に刺激があることは重要なポイントです。

⑤知的行動を増やす

好きなパズルやゲームに挑戦したり、麻雀や囲碁をしたり、手紙や文章を書くなど自宅でできることの他、興味のある美術館や博物館に行くなど外出を伴うものも脳への刺激があり、効果的です。

⑥認知機能のトレーニング

軽度認知障害の段階で低下する認知機能が、エピソード記憶、注意分割機能、行動管理力（計画力）と呼ばれるものです。ストレスを感じてしまうと逆効果となりますが、この3つの能力の低下を防ぐことが大切です。役割をもって、楽しくできることがコツです。

エピソード記憶

以前の出来事を、時間や場所、一緒にいた人やその時の気持ちなどを絡めて記憶する力です。日記を2日後や3日後に思い出しながら書いたり、買い物の記録をつけたりするなどが挙げられます。

注意分割機能

同時進行で複数のことをこなす、複数のことに同時に注意をする力です。みそ汁とおかずを同時に料理する、テレビを見ながら柔軟体操をするなどの「ながら」で訓練することができます。

行動管理力（計画力）

外出や旅行、買い物などの計画を立ててそのとおりに実行する力です。料理のレシピを作る、ゲームをする、などでも訓練することができます。

軽度認知障害の治療で
認知症への進行を抑えられます

認知症と軽度認知障害の患者さんは、65歳以上で4人に1人と見込まれており、とても身近な病気です。神経細胞の変性に由来する認知症は治らないことが多いですが、軽度認知障害の段階で対策を講じることで、認知症への進行を遅らせることができる、認知症そのものを防ぐことができることなどが分かっています。

軽度認知障害は認知症の治療のためにも重要な時期です。小さな変化を見逃さず、本人やご家族が気になったら迷わず専門医を受診しましょう。