認知症は高齢者の病気というイメージを持つ人が多いようですが、それは全くの誤解です。若年性認知症という病気もあり、64歳以下で認知症と診断された人を指しますので、20歳で認知症になる人もいれば、50歳で認知症になる人もいるのです。
2009年の厚生労働省が発表した結果によると、若年性認知症の患者数は約4万人で、女性よりも男性が多く、発症年齢の平均が約51歳であることが判っています。仕事の疲れやうつ病、更年期障害などと錯誤する場合が多く、早期診断が困難なことが特徴として挙げられます。
若年性認知症の原因は?
若年性認知症を引き起こす主な病気は、大きく次の5つが挙げられます。
①血管性認知症
脳卒中が原因で引きおこる病気で、認知症の中で一番多い病気です。
②アルツハイマー病
血管性認知症の次に多い病気で、女性に多いのが特徴です。
③前頭側頭型認知症
前頭葉や側頭葉が委縮してしまうことによって引きおこる病気で、若年層に多く見られるのが特徴です。
④アルコール性認知症
過度のアルコール摂取によって引きおこる病気です。生活習慣の改善で、ある程度は症状が軽減されます。
⑤レビー小体型認知症
レビー小体と呼ばれる特殊なたんぱく質が、神経の伝達を妨害することにより引きおこる病気です。男性に多く見られるのが特徴です。
若年性認知症の症状
若年性認知症の主な症状は、記憶障害と見当識障害の2つです。
記憶障害とは、過去に自分で経験・体験したことを忘れてしまう障害をいい、代表的な症状は物忘れです。見当識障害とは、自分の置かれている立場や状況を把握できなくなる障害をいい、季節などの時間的・時期的なものや、場所などの区別が付かなくなるのが特徴です。
記憶障害の初期症状としては、まず物忘れが多くなります。例えば、お風呂の水を出しっぱなしする、物の保管場所を忘れる、等がこれにあたります。
中期の症状としては、経験・体験したこと自体忘れるようになります。上記の例でいえば、お風呂の水を入れたこと自体を忘れる、物を保管したこと自体を忘れる、といった具合です。また、このステージになると、簡単な計算もできなくなってくるので、日常生活に支障をきたすようになります。後期の症状としては、過去の記憶が無くなってくるのが特徴です。
周囲の人ができること
記憶障害
周囲の記憶障害に対する対処方法としては、まず記憶障害について周囲が深く理解し、患者さんにストレスの無い生活環境を整えていくことが先決になります。記憶障害は、前述したように、過去に体験・経験した記憶が無くなってしまう病気です。
患者さんが認識している世界と、実際の世界には当然ズレが生じてしまうことが多々あります。それを一つ一つ訂正すると、患者さんにとってはストレスになってしまい、かえって逆効果になってしまいます。そうならないようにするためにも、周囲の人が患者さんの世界・環境に合わせて、受け入れていくことが大事になってきます。そうすることで患者さんは安心し、ストレスの無い日常を送ることができます。
基本的に記憶障害は進行性の障害ですので改善は困難ですが、今は進行を減速させる薬がありますので、医師に相談の上、処方してもらうのも良いでしょう。
見当識障害
見当識障害は往々にして、時間的な感覚に障害がでることが多く、今日の日付や時間、今の季節、等がわからなくなってしまいます。症状が進行すると、朝・昼・晩の区別が付かなくなったり、今いる場所がわからくなったり、人の区別がつかなくなったりします。
周囲の人の見当識障害への対処方法としては、基本的に怒ったり責めたりせずに、受け入れて話を合わせることが大事です。注意をしたり怒ったりして、興奮させるとかえって逆効果です。認知症は患者さんだけでなく、周囲の人の理解・協力を得ながら、対処していくことが大切です。