悪化するとつらい?前立腺肥大症の合併症とは

悪化するとつらい?前立腺肥大症の合併症とは

この記事の監修ドクター|菅原 草先生(すがわら泌尿器科・内科)

排尿に違和感があると最初に疑われる病気は前立腺肥大症です。病気についての理解を深めましょう。

前立腺肥大症とは

悩む男性

前立腺とは、尿道括約筋の奥、膀胱の下にあるクルミくらいの大きさの器官です。精液の一部を作る男性生殖器のひとつです。前立腺肥大症とは、前立腺部尿道を取り巻く内腺が肥大する病気です。肥大した前立腺は卵やミカンほどの大きさにもなり、尿道を圧迫して排尿障害を引き起こします。

前立腺肥大症の原因は明らかにはなっていませんが、男性ホルモンが関係していることは確かです。また、生活習慣病とも関連して起こることも分かっています。患者さんは加齢とともに増え、肥大は30代から始まることもありますが、患者さんは50代から増え始めます。前立腺の肥大は60代の半数、70代の7割、80代の8割で見られる症状ですが、あくまで主観的なQOL疾患であり、必ずしも治療が必要だということはありません。前立腺が大きくても症状が伴わなければ、前立腺肥大症とは言わず、治療の対象にはなりません。逆に前立腺が正常大でも排尿障害や畜尿障害が伴えば、前立腺肥大症として治療の対象になります。必ずしも前立腺の大きさと排尿障害の臨床症状の程度に相関しません。要は前立腺部尿道の内腺の圧迫の程度次第ということなので、前立腺が小さくても尿道を圧迫する形態をしていれば、前立腺肥大症の症状を伴いやすいし、前立腺が大きくても前立腺部尿道がよく開いていれば排尿障害は伴わないわけです。

前立腺肥大症の初期の自覚症状とは

トイレにいる男性

尿の勢いが弱くなった、尿を出したいのになかなか出ない、排尿の途中で止まってしまう、いきまないと排尿できない、夜間頻尿、尿意切迫感などがあります。
前立腺部尿道を圧迫することで始め、排出障害が出現しますが、腹圧排尿などが続くと、二次的に排尿筋の過緊張からサイトカイン等の化学伝達物質が放出され、尿意に対して敏感になる過活動膀胱が併発し、膀胱に少ししか尿が溜まっていないのに、膀胱が勝手に収縮してしまい尿意を催してしまう現象が起こります。

前立腺肥大症が悪化すると合併症が起こります

肉眼的血尿
それほど頻繁に起こるものではありませんが、肥大した前立腺の表面には怒張した血管が張りめぐらされているため、怒張した血管が破綻した際に肉眼的血尿となります。
尿路感染
前立腺肥大による排出障害から残尿が増えることで、本来尿路は無菌であるはずが、残尿自体が細菌の温床となり、尿路感染を起こしやすくなります。
尿閉
膀胱に尿が溜まっているのに、肥大した前立腺が膀胱の出口を塞いでしまい排尿できない状態です。この状態が長く続くと、次第に腎機能に影響が出てきて、急性腎後性腎不全を発症してしまいます。また、溢流性尿失禁の原因にもなります。
膀胱結石
残尿が多いことで、尿中に溶解している老廃物や結石の成分が析出して結晶化し、さらに感染尿からリン酸マグネシウムアンモニウム結石などの感染結石ができやすくなります。本来の尿路結石は腎臓ででき、腎盂内で大きくなります。小さいものなら尿とともに排出されますが、大きくなると尿管や膀胱、尿道に詰まって痛みや排尿障害の原因となります。腎臓由来の結石の主成分はシュウ酸Caがほとんどで、他にリン酸Caや尿酸結石などが一般的です。
腎機能障害
残尿が増えたり、排尿障害で膀胱壁が厚くなったりすると、腎臓から膀胱への尿の流れが妨害され、腎臓が水膨れ(水腎症)となり、腎不全に移行します。

早期治療で合併症は防げます

診療

前立腺肥大症は良性腫瘍ですが、症状が進むと上記のように合併症が起こりやすくなります。排尿時の違和感が排尿障害へと悪化する前に、早期治療を行うことが大切です。小さな違和感を見過ごさず、悪化する前の早期に泌尿器科専門医を受診しましょう。