この記事の監修ドクター|中野 勝先生(中野泌尿器科医院)
どちらも排尿障害が現れる病気です。どんな違いがあるのか、早期発見のためにできることも見ていきましょう。
前立腺肥大症とは
前立腺とは、男性特有の臓器で、生殖器官の1つです。尿道の奥、膀胱の出口をぐるりと取り巻いており、大きさはクルミほどです。この前立腺が何らかの理由で少しずつ大きくなってしまうのが前立腺肥大症です。原因は、加齢やストレス、生活習慣や喫煙などが考えられますが、まだはっきりと解明されてはいません。
前立腺がんとは
前立腺にできるがんで、他のがん同様、進行すると転移や痛みが起こります。年齢と主に患者さんは増える傾向にあり、患者数も急増しているがんです。前立腺肥大症と併発することもあります。
どちらも排尿障害が起こります
前立腺肥大症と前立腺がんの自覚症状はとてもよく似ており、どちらも排尿に異常が現れます。これは前立腺が膀胱の出口を取り囲んでいて、出口の開閉に関わっていることから起こります。前立腺が肥大する、あるいは腫瘍ができると、尿道が圧迫されるので排尿障害が生じるのです。
よく起きる症状は以下のようなものです。
- 尿が出にくい
- トイレで他の人よりも時間がかかる
- 排尿回数が増えた(頻尿)
- 夜間にトイレのために何度も起きる
- トイレに行ってもなかなか尿が出ない
- 排尿に力がいる、いきまないと出ない
- 排尿後も残尿感がある
- 排尿後しばらくしたら、またトイレに行きたくなる
- 尿に勢いがない
- 排尿の線が細くなった
- 尿に血が混じる
- 排尿後も少量の尿が漏れて衣服を汚すことがある
- 尿が出なくなってしまった
前立腺がんの早期発見は難しい?
がんの多くは自覚症状が少なく発見が遅れがちですが、前立腺がんもその1つです。その理由は、前立腺にできるがんは、前立腺の中央部、尿道の周囲にできるのではなく、前立腺の外側に発生することが多いからです。
このため、前立腺にがんが生じても尿道がすぐに圧迫されるわけではなく、排尿障害が起こりにくいからです。前立腺がんによって排尿障害が起こる時は、かなり進行してしまっている場合が多く見られます。
前立腺がんが進行すると…
前立腺がんが進行して大きくなると、周囲の膀胱や尿道などへ広がって、尿に血が混じるなどの症状が起こります。さらに進行すると骨に転移することが多く、腰の骨に転移して強い腰痛を生じることもあります。
前立腺がんは早期発見と
早期治療で治癒が可能です
前立腺がんにかかる患者さんの数も、亡くなる患者さんの数も増えていますが、治療によって助かる患者さんもまた増えています。国内でおよそ78000人の患者さんが前立腺がんと診断を受けていますが、亡くなる患者さんは10000人ほど。前立腺がんは早期発見で治癒できるがんなのです。
前立腺がんの検査とは
前立腺腫瘍マーカーや血清PSA測定と呼ばれる血液検査で、がんの有無がわかります。この検査で異常値が出たら、MRI検査や、前立腺生理検査を行います。前立腺生理検査は局所麻酔で行い、肛門から器具を挿入して、超音波で前立腺を確認しながら前立腺に針を刺して組織を採取します。採取した組織は顕微鏡で検査をし、がん組織が含まれていれば、前立腺がんの診断がおります。
前立腺がんを予防、早期発見するためにできること
前立腺がんは初期の自覚症状が少ないがんですが、発見のきっかけはいくつかあります。
- ①職場や自治体の前立腺がん検診で発見
- ②前立腺肥大症の治療中に発見
前立腺がんの早期発見のためには、50歳を超えたら、年に1回、PSA検査を受けること、前立腺肥大症の治療をしっかり続けることが大切です。前立腺がんは、がん全体の中でも比較的進行が緩やかですので、諦めず、油断せず、早期発見に目指しましょう。
早めの受診とがん検診が大切です
前立腺肥大症は進行しますし、前立腺がんは早期発見が大切です。排尿の異常は軽視せず、早めに泌尿器科専門医を受診しましょう。また、がん検診などのチャンスを活用し、早期発見できるように心がけましょう。