急性と慢性がある前立腺炎。症状や原因、治療法に違いは?

急性と慢性がある前立腺炎。症状や原因、治療法に違いは?

この記事の監修ドクター|中野 勝先生(中野泌尿器科医院)

前立腺炎には急性と慢性があります。原因や症状の現れ方、治療などに違いがあります。

前立腺炎は種類があります

前立腺とは、男性の尿道の奥で膀胱の出口を取り囲んでいる器官で、精液の成分の一部を作っています。この前立腺の中で何らかの理由によって炎症が起きてしまうのが前立腺炎です。前立腺炎には大きく3つの種類があります。

慢性非細菌性前立腺炎
炎症の原因が細菌でない場合を指します。前立腺炎の中でも患者さんの数が最も多いのがこの種類です。炎症が起きる要因として、仕事や乗り物移動などで長時間の座りっぱなし、自転車やバイクなどで起きる機械的な刺激などが挙げられます。細菌によって起きる前立腺炎ではありませんが、ウイルスによって起こるものは含まれます。性感染症であるクラミジアなどの他、マイコプラズマなどでも起こります。
慢性細菌性前立腺炎
主に尿道から侵入した細菌に感染し、前立腺が炎症を起こします。主な原因菌は大腸菌で、これはどんな人の腸にもみられる細菌です。
急性前立腺炎
前立腺が細菌感染することで炎症が起こります。慢性細菌性前立腺炎と同じ感染経路が考えられますが、症状の現れ方が急激になります。

前立腺炎の種類によって症状の違いは?

トイレ

慢性の前立腺炎は、どちらも排尿の異常として、排尿の終わりに痛みを感じる、頻尿になる、残尿感があるなどの症状が起こります。また、足の付け根の鼠径部や下腹部、ペニスや会陰部に不快感や痛みが生じます。射精時や射精後の痛みや、精液に血液が混じる他、睾丸が痛いと感じることもあります。

急性の前立腺炎は、悪寒や発熱などの全身症状が急激に起こります。慢性前立腺炎の自覚症状も生じますが、膀胱炎を併発したり、尿が全く出なくなることもあります。

前立腺炎はこんな検査で診断します

尿検査
細菌性前立腺炎の場合は、尿中に膿として白血球と細菌が排出されますので、この有無を調べます。
直腸指診
肛門から医師の指を挿入し、前立腺の腫れの有無を調べる検査です。触ると痛みがあることが多いです。
血液検査
ウイルス感染の場合に、ウイルスを特定します。

前立腺炎はこんな治療を行います

慢性非細菌性前立腺炎
前立腺マッサージを行い、前立腺液を排出させます。並行して抗菌剤を処方し、1~2週間様子を見ます。痛みには鎮痛剤を処方し、対症療法で治療を行います。ウイルス感染を起こしている場合は、それぞれのウイルスに適した抗菌剤を用います。
慢性細菌性前立腺炎
抗菌剤を投与しながら前立腺マッサージを行い、細菌を含んだ前立腺液を排出させます。
急性前立腺炎
発熱には解熱剤を処方します。前立腺炎に対しては抗菌剤の処方と前立腺マッサージを行って、前立腺液の排出を促します。抗菌剤は内服薬と注射薬があります。

前立腺炎は若い年代に多い病気です

前立腺炎は働き盛りの若い年代に多い病気で、男性全体の5%ほどが経験している病気とも言われています。前立腺炎になりやすい人はこんな人です。

  • デスクワークが長時間続く
  • 車の運転時間が長い
  • 精神的なストレスが大きい

ストレスは、物理的なものでも精神的なものでも、全身の血流を悪くします。特に骨盤内の血流が悪いと、前立腺炎になりやすいことがわかっています。また、急性前立腺炎にかかった人が、症状が治りきらず、慢性前立腺炎になってしまうこともあります。

前立腺炎の治療は焦らずゆっくり

前立腺炎は、急性であっても慢性であっても、根気強い治療が必要な病気です。症状が軽くなった、あるいは効果がないからと言って、処方された薬を自己判断で中止することは避けましょう。焦らずゆっくり治していく病気です。

気になる症状がある人は、早めに泌尿器科専門医を受診しましょう。