この記事の監修ドクター|中野 勝先生(中野泌尿器科医院)
男性特有の臓器である前立腺では、いろいろな病気の可能性があります。正確な診断のために行われる検査を見ていきましょう。
前立腺とは
前立腺は男性生殖器の1つで、尿道の奥の膀胱の出口を外側から取り囲んでいる器官で、大きさはクルミと同じくらいです。精液の一部と作る働きの他、膀胱の出口の開閉に関わり、排尿をコントロールする働きもあります。
前立腺の病気はいろいろ
- 急性前立腺炎
- 前立腺が、細菌感染やウイルス感染などによって炎症を起こしてしまう病気です。発熱や痛み、排尿時や射精時の痛み、頻尿や残尿感などの症状が強く急激に起こります。すべての年代でかかる病気で、前立腺肥大症や膀胱炎を併発することもあります。
- 慢性前立腺炎
- 急性前立腺炎と症状は似ていますが、症状の現れ方は緩やかで、気づくのに遅れることもあります。大腸菌などの細菌感染による細菌性前立腺炎と、ウイルス感染などを含む非細菌性前立腺炎に分かれます。働き盛りの若い年代に多く起こる病気で、ストレスとの関連も言われています。
- 前立腺肥大症
- 前立腺が何らかの原因で少しずつ大きくなり、尿道の圧迫が起こる病気です。原因は加齢や男性ホルモンの影響、生活習慣病や喫煙などが考えられますが、まだはっきりとは解明されていません。
排尿に障害が起こることが多く、尿が出にくい、まったく排尿できないなどの症状が起こります。排尿障害は残尿からの感染や腎機能障害が起こりやすくなりますので早めの受診が必要です。 - 前立腺がん
- 前立腺にできるがんのことで、年齢とともにかかりやすくなり、前立腺肥大症と併発することもあります。近年国内では急増しているがんで、注意が必要です。
こんな検査で診断します
患者さんに自覚症状をお聞きします
前立腺の病気では排尿に異常が生じることが多いので、患者さんに排尿の状況を詳しくお聞きします。残尿感、途切れや尿の勢いなど排尿中の様子、いきみの有無、夜間の排尿回数などです。
直腸診で痛みやしこりの有無を調べます
前立腺は肛門の手前の直腸に隣り合わせにありますので、肛門から医師の指を挿入し検査を行います。圧迫した時の痛みの有無、しこりの有無、前立腺の大きさや硬さ、形も触って調べます。
尿検査と尿細菌培養検査
例えば、前立腺炎では、炎症の原因菌や白血球が膿として尿に排出されますので、これを尿検査によって調べることができます。採取した尿を培養して、原因菌を突き止めることもできます。
検査用のトイレで尿流測定を行います
トイレ型の測定装置に向かって排尿すると、尿の勢いや排尿量、排尿時間などを測定することができます。
超音波で残尿を測定します
下腹部に超音波を当てて、残っている尿の量を調べます。超音波は人の耳には聞こえない周波の音のことで、物質の状態によって伝播速度に差があります。最も早く通り抜けるのが固体、次が液体、一番遅く伝わるのが気体です。この速度差を元に画像化して体内の様子を調べることができます。
超音波検査で前立腺のサイズを測定します
超音波で前立腺の大きさを測ります。下腹部の上から超音波を当てる方法と、直腸内から当てる方法があります。
前立腺腫瘍マーカーでがんの有無を調べます
前立腺特異抗原測定や血清PSA測定とも呼ばれる血液検査で、前立腺がんがあると、高い数値が出ます。この検査で前立腺にがんがあるかどうかがわかります。
排尿日誌で排尿の回数や時刻、量を調べます
患者さんに自宅で、排尿時刻や排尿量などを記録してもらって行います。頻尿の原因がわかります。
尿流動態検査で膀胱の尿を溜める機能を調べます
尿道にカテーテルを通して生理食塩水を膀胱へ送り、膀胱の蓄尿量を調べることができます。
血清クレアチン測定で腎機能を調べます
前立腺肥大症が進行すると、排尿が困難になりますので、尿を作る腎機能に負担がかかります。このため、腎機能の状態を調べる検査です。血液検査です。
上部尿路超音波検査で腎臓の腫れを調べます
前立腺肥大症には水腎症と言って、腎臓に水が溜まって腫れる病気を合併することがあります。超音波で腎臓の腫れの有無や度合いを調べます。
排尿の異常は前立腺の病気かも!?
早めの受診を!
前立腺の病気にはいくつも種類があり、いずれも生活に大きな支障を生じます。前立腺の病気の多くが排尿に異常が生じることが多いですので、排尿に異常を感じたら、できるだけ早く、泌尿器科専門医へ受診しましょう。