排尿の違和感は前立腺肥大症だけじゃない!疑われる病気について

排尿の違和感は前立腺肥大症だけじゃない!疑われる病気について

この記事の監修ドクター|菅原 草先生(すがわら泌尿器科・内科)

排尿の違和感を症状とする病気は前立腺肥大症だけではありません。どんな病気があるのでしょうか。

こんな排尿の違和感はありませんか?

トイレ

頻尿

日中起きている間は8回程程度が正常な尿意の頻度ですが、これを超えて尿意を催してしまうのが頻尿です。心因性のものから、加齢によるもの、過活動膀胱や前立腺炎、膀胱炎や尿道炎、前立腺肥大症などが考えられます。

夜間頻尿

日中の頻尿より遅れて起こることが多い症状です。就寝中に2度以上尿意で起きてしまうのが夜間頻尿です。前立腺肥大症や過活動膀胱に代表とされる泌尿器科疾患のみならず、慢性心不全や高血圧、糖尿病などの循環器疾患や生活習慣病などが原因となうこともあります。

尿閉

膀胱に尿が充分に溜まっているのに、膀胱の出口が塞がってしまい、排尿ができない状態です。尿道結石や尿路の炎症、前立腺肥大症などで尿道が閉塞していることが考えられます。また、神経因性膀胱といって、脳脊髄疾患や糖尿病などによる末梢神経障害などが原因で膀胱の収縮力が低下し、排尿できずに発症することもあります。

残尿感

排尿後にまだ尿が残っているような感覚がある状態です。膀胱炎や前立腺肥大症、前立腺炎が考えられます。

尿失禁

意思と関係なく尿が漏れてしまいます。笑ったりくしゃみをしたりした瞬間に腹圧がかかり漏れてしまう場合(腹圧性尿失禁)と、急に尿意を催してトイレに間に合わない切迫性尿失禁などがあります。また、両者が混在する混合性尿失禁や、溢流性尿失禁などもあります。腹圧性尿失禁は、お産後の骨盤底筋の損傷による尿道括約筋の弛緩や、肥満による内臓脂肪の増加などが原因で起こります。また切迫性尿失禁は過活動膀胱に伴っておこります。溢流性尿失禁は脳性脊髄疾患や糖尿病性末梢神経障害による神経因性膀胱が原因となります。

その他

細くちょろちょろ出る(尿線細小)、トイレに入ってもすぐに出ない(排尿開始遅延)、排尿が線にならずあちこちに飛び散る(尿線分裂)、排尿途中で止まってしまう(尿線途絶)、尿のキレが悪い(排尿後尿滴下)なども排尿障害です。異常を軽視せず、泌尿器科専門医へ受診しましょう。

こんな病気が考えられます

家族

前立腺炎

細菌が前立腺に感染して炎症を起こします。急性と慢性に分かれ、急性の場合は大腸菌などの尿中の細菌感染が多く、慢性の場合は細菌性と非細菌性とに分かれます。どちらも下腹部の違和感や痛み、排尿痛や頻尿などの排尿の違和感が症状として出ますが、急性は比較的強い症状で発熱を伴ったり、時に尿閉となる場合や敗血症まで移行する場合もあります。

膀胱炎

急性と慢性に分けられますが、どちらも細菌感染症です。急性の場合は主に大腸菌が尿道を通って膀胱に入り、炎症を起こします。慢性の場合は複雑性尿路感染を引き起こしていることが多く、起炎菌も1菌種ではなく他菌種である場が多く見受けられます。

過活動膀胱

排尿筋が過剰に活動して、急に強い尿意を催したり(尿意切迫感)、トイレが近くなったり(頻尿)、トイレに間に合わずに漏れてしまったり(切迫性尿失禁)します。就寝中に何度もトイレで起きる夜間頻尿も起こります。

前立腺肥大症

前立腺は膀胱のすぐ下にある男性生殖器間のひとつで、精液の一部を作る役目を担っておいます。本来はクルミくらいの大きさの器官ですが、前立腺肥大症になると卵やミカンくらいの大きさにまで肥大します。肥大した前立腺は尿道を圧迫して排尿障害を起こします。

 

前立腺肥大症の原因は明らかになっていませんが、男性ホルモンや生活習慣病が関わっていることが分かっています。患者さんは加齢とともに増え、30代の患者さんはまれですが、50代から増えます。60代では全男性の5割、70代では7割、80代では8割に前立腺の肥大が見られます。しかし良性腫瘍ですのですべてに治療が必要ではなく、生活に支障が出た時点で治療が検討されます。

早期治療が大切。早めの受診を

脳の分析資料

上記には比較的多い局所的な病気を挙げましたが、これ以外にも糖尿病や腎臓病など全身的な病気も考えられます。いずれも悪化すると生活に支障が出て、治療も難しくなる病気です。早期発見と早期治療が大切です。小さな異常に大きな病気が隠れている可能性を軽視せず、早めに泌尿器科専門医を受診しましょう。