この記事の監修ドクター|齋藤 陽先生(目黒外科)
下肢静脈瘤の治療はいくつもあります。まずは自分の症状のタイプを知ること、それから症状に合った治療法を選ぶことが大切です。
下肢静脈瘤の治療は大きく分けて2つです
下肢静脈瘤の治療法は、分かりやすく大きく分けると以下の2つです。
- ・症状を改善する治療法
- ・見た目を改善する治療法
では、これらの治療法は下肢静脈瘤の症状によって選択されます。下肢静脈瘤の症状は、以下の4つに分けられます。
① 伏在型
静脈が大きくこぶ状に膨らみます。むくみやだるさ、疲れやすいなどの見えない症状を伴う場合が多く見られます。進行すると外科治療を選択する必要が出てくるタイプです。
② 側枝型
網目状やくもの巣状とともに、軽症型の下肢静脈瘤ですが、伏在型と併発することがあります。血管が青く筋だって見えます。
③ 網目状
皮膚のすぐ下の血管が、網の目のように細く赤黒く見えます。
④ くもの巣状
さらに細い血管がくもの巣のように浮き上がって見えます。軽症型の下肢静脈瘤ですが、足の広い範囲で起こり、見た目の問題が大きいタイプです。
伏在型は症状の改善が必要ですが、軽症型とされる側枝型、網目状、くもの巣状はその他に症状がなく、重症化することもないので、主に見た目の改善が治療の目的になります。しかし、軽症型の場合も、伏在型が隠れていないか?をよく確かめる必要があります。
症状を改善させる治療(メリットとデメリット)
- 保存療法① 生活習慣の改善(進行を予防する)
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下肢静脈瘤は、足の血液が心臓に戻りにくくなる病気です。従って、血流を良くするような生活習慣に改善していきます。具体的には、長時間の立ち仕事を避け、適度に歩き回る、1時間に1回は体操をするなどしましょう。
また、座りっぱなしも良くありませんので、座りながらも足首を上下に動かす、台を置いて足を高くするなども効果的です。入浴時に足のマッサージをすると、足の血流が良くなります。寝るときは足を高くして寝るのも良いでしょう。
ジョギングやウォーキングなどの運動も効果的です。全身の血流を良くすると共に、足の筋肉を鍛え、足の筋肉のポンプ作用を改善してくれます。
- 保存療法② 圧迫療法
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弾性ストッキングを着用します。弾性ストッキングは、足を締め付けてふくらはぎのポンプ作用を手伝う効果と、足の静脈に血液が溜まるのを防ぐ効果があります。膝下丈(ハイソックス)、腿までの丈(ストッキング)、腰まで(パンスト)のタイプがあります。
手軽に始めることができる治療法ですが、脱いでしまうと治療効果はなく、夏の暑さが大敵です。また、はき続けることで、肌の弱い人などはかゆくなったり、皮膚炎を起こすことがあります。
- 外科治療① 血管内治療(カテーテル治療)
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下肢静脈瘤を起こしている静脈にカテーテルを挿入し、カテーテルの先端から高熱を出し、静脈を焼いて塞ぎます。痛みや傷跡も小さく、局所麻酔で行うため入院の必要もなく、日帰りで治療を行えます。
- 外科治療② ストリッピング手術
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下肢静脈瘤を起こしている静脈にワイヤーを通し、ワイヤーごと静脈を引き抜く治療法です。下半身麻酔で入院治療となることが多く、患者さんへの負担が多少多くなりますが、再発の可能性はとても低い治療法です。
見た目を良くする治療
硬化療法
軽症型の下肢静脈瘤に適用される治療法です。硬化剤で静脈に炎症を起こし、皮膚の上からガーゼなどで圧迫することで静脈を塞ぎます。デコボコしていた患部が平らになります。治療後数ヶ月の色素沈着が残ることがあります。
皮膚レーザー照射
自由診療(保険適用外)なので、治療代が高くなります。皮膚の上からレーザーを照射し、網目状やくもの巣状の下肢静脈瘤を小さく、目立たなくします。痛みもなく、日帰りで行える治療です。硬化療法とくらべると、色素沈着はあまり見られず、美容的な効果は高い治療です。
自分の症状に合った治療法を選びましょう
下肢静脈瘤の治療法は複数あり、選ぶことができますが、症状によって向き不向きがあります。下肢静脈瘤の専門医あるいは心臓血管外科医師と相談の上、自分の症状に合った治療法を選ぶことが大切です。