この記事の監修ドクター|齋藤 陽先生(目黒外科)
見た目も症状もつらい下肢静脈瘤。どんな人がなりやすく、どんな予防策があるのでしょうか。
下肢静脈瘤は身近な病気です
日本における下肢静脈瘤の患者さんは、15歳以上の43%を占めると言う調査報告があります。患者さんの実際の数は4,800万人ほどと見られます。このことからもわかるように、下肢静脈瘤は、たいへん身近な病気です。
また、症状が強く出るため、症状改善のための外科治療が必要になる伏在型の患者さんは、15歳以上の人全体の8.7%、実際の数は970万人ほどとされています。
下肢静脈瘤は、足の筋肉によるポンプ作用が悪くなることと、静脈の血管内にある逆流防止弁が壊れることによって起こる病気です。そのため、加齢と共に患者さんが増えることと、症状が悪化することが予測できます。
先述の調査でも、15歳以上では43%ですが、30歳以上では67%の人に、下肢静脈瘤が見られると報告されています。高齢者が増えている現状から、これからも患者さんが増え続ける病気であると考えられます。
こんな人は要注意?
下肢静脈瘤の患者さんには、以下のような傾向が見られます。
- 男性よりも女性に多い
- 40歳以上の患者さんが多い
- 出産経験のある女性の半数ほどが罹患している
- 家族に下肢静脈瘤の患者さんがいる
- 立ち仕事が長い人
- 肥満の人
- 便秘がちの人
下肢静脈瘤は、足の静脈の逆流防止弁がこわれて起こります。ですので、壊れやすい体質や行動、習慣は大きな原因となります。両親が下肢静脈瘤を患うと、その子も90%の確率でかかるとされます。
男性よりも女性に多い理由は、ホルモンの影響と考えられます。特に妊娠時のホルモンは、静脈の逆流防止弁をもろくし、下肢静脈瘤が起こりやすくなります。さらに重たくなった子宮が静脈を圧迫し、負担をかけるので、発症しやすくなります。
立ち仕事をしている患者さんが多い理由は、立ちっぱなしで足の筋肉を使わないと、「足は第二の心臓」と呼ばれるほどのポンプ作用が弱くなってしまうのです。その結果、逆流防止弁に負担がかかり、壊れやすくなります。
下肢静脈瘤にならないためにできること
・マッサージ
座って、足の静脈の流れに沿って足を撫でます。あまり強くなくてもむくみ予防やむくみをとる効果があります。入浴中のマッサージも効果的です。下肢静脈瘤になりかけていると言う人は、早めに弾性ストッキングの着用をするのも良いでしょう。
・ジョギング、ウォーキング
軽い運動は全身の血流を改善し、特に歩く動作は足の筋肉を使いますので、足のポンプ作用を手伝う効果があります。肥満もまた、下肢静脈瘤の原因となっていますので、肥満予防としても運動は効果的です。
・水中ウォーキング
水圧と浮力が足の血液循環を促進します。
・食事
高血圧や便秘は、静脈の逆流防止弁に負担をかけるため、これらを予防する食事が大切です。具体的には塩分や脂質のとり過ぎに注意すること、食物繊維を多めにとること、ポリフェノールを意識してとること、などです。
・長時間の立ち仕事を避ける
狭い場所で余り動かない立ち仕事は要注意です。また、座りっぱなしの仕事も注意が必要です。どちらも足を動かさないため、足の血流が歩くなり、悪影響があります。
足の曲げ伸ばしや足首の上げ下げなどの体操をこまめに行う、歩き回るなどの対策を心掛けましょう。また、弾性ストッキングの着用も、下肢静脈瘤の予防策として効果的です。
中高年女性は注意しましょう
下肢静脈瘤になりやすい人と予防策についてお話しました。中高年代の女性に多く見られる病気ですので、なりやすい人は予防策をとってみると良いでしょう。症状が見られたときは、早めに下肢静脈瘤の専門医あるいは心臓血管外科を受診しましょう。