ちゃんと知っていますか？アトピーとアレルギーの関係

アトピーというとアレルギーと考えがちですが、実は違うのです。詳しく見ていきましょう。

目次

腕の皮膚を掻く男性

人の体は日常的に細菌やウイルス、その他有害物質に晒されています。そのため、これら有害物質に対抗して体を守る、免疫という機能が備わっています。様々な種類の白血球がその役目を負っており、日々体の中で有害物質と戦っているのです。

さて、この免疫機能が何らかの原因で異常を起こして過剰に働いてしまうときがあります。有害物質でないものを有害物質として認識し、攻撃してしまいます。

このとき、自分の体の骨や関節などの成分を攻撃すると、リウマチなどの「自己免疫疾患」、外界の有害でない物質に過敏に反応して攻撃するのが「アレルギー疾患」です。

アレルギー疾患の原因となるのは、日常生活によくあるありふれた物質です。例えば、花粉やほこり（ハウスダスト）、ペットの毛やゴム製品などがよく知られています。食品では、卵や鶏肉、小麦やそばなど、いずれも生活の中にありふれて存在するものです。

わかりやすくよく知られているものに、花粉症や気管支喘息、皮膚のかゆみや発疹などがあります。アレルギー疾患の激しい反応として、アナフィラキシーショックがあります。呼吸困難やチアノーゼを伴う、危険な状態です。

これは「違います」。そうなのです、違うのです。しかし、わかりにくいのが、アトピー性皮膚炎は「アレルギーを原因としている場合もある」ということです。アトピー性皮膚炎＝アレルギー疾患ではないのです。

アレルギー性の皮膚炎には、じんましんや接触皮膚炎があります。原因物質を食べたり触れたりすると、かゆみや赤み、ぶつぶつなどが出ます。じんましんは腹部から、接触皮膚炎は触れた部分から症状が始まります。

アトピー性皮膚炎の症状

長く続いて慢性化する湿疹で、かゆみを伴います。原因は乾燥と免疫力の低下が主ですが、さまざまな刺激やアレルギー反応が加わり悪化します。

最も軽度のものが、カサカサと皮膚が乾燥している状態ですが、これが悪化すると赤みや皮膚が小さくはがれる鱗屑（りんせつ）が起こります。肌着や靴下などに、白い粉のようなものが付着するようになります。

さらに症状が進むと、赤みや鱗屑が強まり、盛り上がる湿疹や、かゆみで掻いてしまった傷などができ始めます。さらに悪化すると、湿疹の盛り上がりも増え、じゅくじゅくと湿った湿疹や皮膚がごわついて硬くなってしまうところなどが増えてきます。

かゆみもひどく、掻くことで傷や水泡も増えていき、患者さんには耐えがたい症状となります。かゆみによる集中力や判断力、学業や仕事のパフォーマンスが低下するなど、生活への影響は大きなものです。

アトピー性皮膚炎は、乾燥や皮膚の免疫力の低下などを主な原因としていると先に述べましたが、きっかけは患者さんによって多種多様です。アレルギー反応である場合もあれば、ストレスや疲労をきっかけに起きることもあります。ホルモンバランスの乱れなども原因の1つです。

アトピー性皮膚炎の治療は、症状のコントロールが目標: このように多種多様な原因で起こるアトピー性皮膚炎ですので、根治は困難とも言えます。皮膚科専門医におけるアトピー性皮膚炎の治療は、患者さんの生活の質に影響しない軽度の状態へ症状をコントロールすることを目標としています。
外用薬を処方して薬物療法を行います: そのために、皮膚科専門医では、主に外用薬（塗り薬）の処方を中心に治療を行います。皮膚の炎症を抑えるステロイド剤、皮膚の乾燥を防ぐ保湿剤、かゆみを抑える抗ヒスタミン剤、アレルギー反応に対しては抗アレルギー薬などを、症状の程度に合わせて処方します。
栄養指導や腸内環境改善も効果的です: その他には、体の免疫機能そのものを高めるための栄養指導、免疫機能に大きな影響力のある腸内環境の改善なども、症状改善に効果的です。