アトピー性皮フ炎は子どもにも遺伝する!?

アトピー性皮フ炎は子どもにも遺伝する!?

この記事の監修ドクター|山崎 まいこ先生(まいこホリスティックスキンクリニック)

自身がアトピー性皮フ炎だと、子どもも同じ病気になり自分同様悩まされるのではないかと心配される声が多く聞こえます。アトピー性皮フ炎は子どもに遺伝するものなのでしょうか。

アトピー性皮フ炎になりやすい体質

アレルギーのメカニズム

結論から言うと、アトピー性皮フ炎という病気そのものは遺伝しません。しかし、この病気を引き起こす「アトピー素因」が遺伝するケースがあると考えられています。つまり、アトピー性皮膚炎になりやすい体質を引き継いでいるということです。アトピー素因を持っていると、アレルゲンに触れたとき、IgE抗体というたんぱく質を作りやすく、アトピー性皮フ炎や花粉症・気管支喘息などのアレルギー症を引き起こすリスクが高まります。

しかし、この素因を持っているからといって、必ずアトピー性皮フ炎やその他のアレルギー症を発症するとは限りませんし、日本人の10%がアトピー素因を持っています。そう考えるとこの素因を持っている人は思っている以上に多く、なんら特別な体質ではないことが分かります。

アトピー体質になる確率

アトピー性皮フ炎を引き起こしやすい体質の遺伝確率の目安は、下記のとおりです。

赤ちゃんのアトピー

  • 父親か母親、どちらかがアトピー体質の場合・・・30%
  • 両親の両方がアトピー体質の場合・・・50~70%

50~70%と聞くとたしかに多いですが、100%ではありませんので、必ず遺伝するわけではないといえます。また、アトピー体質であっても、アトピー性皮フ炎になるとは限らないことが分かります。

アトピー性皮フ炎の発症を抑える方法

家庭の掃除

前述の通り、アトピー性皮フ炎になりやすい体質であっても、発症をする場合とそうでない場合があります。人間の体には、元々病気を抑制する力があります。アトピー体質の場合は、発症を抑える努力をするのがポイントになります。

まず、アトピー性皮フ炎の多くが乾燥肌に起こるので、肌の保湿に気を配ります。肌が潤っていると、バリア機能が働き、アレルギーの原因になる物質が入りにくくなります。また、アレルギーの原因に多いダニやほこりなどにできるだけ接触しないよう、こまめに掃除を行うのも予防に大切です。また、体内の免疫力を保つのも大事ですので、質の良い睡眠を中心とした休息を十分にとりましょう。

遺伝以外のアトピー性皮フ炎の要因

アトピー性皮フ炎の要因は遺伝性のものだけではありません。両親さらには祖父母までもがアトピー体質でないのに、子どもが突然アトピー性皮フ炎にかかることもあります。なぜなら、アトピー性皮フ炎の発症の有無は、環境によるところが多いからです。

戦前から現在まで、遺伝子の変化が見られないにも限らず、アトピー性皮フ炎の発症が20倍にも増えていることがそれを物語っています。その間に、日本人の生活環境は大きく変わりました。ハウスダストにさらされる機会が増え、和食から洋食傾向になり、食卓に添加物などアレルゲンとなるものが多く登場しています。

また、化学成分の多い石鹸・シャンプーや化粧品が出回ったり、日常生活でストレスを溜めやすくなるなど、生活習慣・スタイルが、アトピー性皮フ炎を発症させるきっかけになっているのです。よって、環境的要因へのアプローチで、9割程のアトピー性皮フ炎は改善できると考えられています。

適切な予防と治療が大切です

以上のように、アトピー性皮フ炎になりやすい体質が遺伝することはありますが、それが発症の直接的な原因ではないと考えられ、発症予防が大切であることが分かります。それでもなってしまったら皮膚科専門医を受診し、適切な治療を受け、アレルゲンを知っておくことで再発を防げます。