この記事の監修ドクター|大戸 秀恭先生(勝どき小児クリニック)
おたふく風邪は軽い感染症で心配いらない?いいえ、合併症に要注意です。
おたふくかぜってどんな病気?
おたふく風邪は、正式名称を「流行性耳下腺炎」と言い、ムンプスウイルスというウイルスに感染することによって起こる感染症です。世界中で見られる感染症で、発症のおよそ半数は未就学児で、特に4歳児の発症が目立ちます。
耳の下の唾液腺を耳下腺と呼びますが、ここが腫れて発熱を伴います。腫れるのは両耳が多いですが、片側のみ腫れるケースも多く見られます。口の開け閉めや食事の際に、腫れた部位が痛むこともあります。
発熱は38℃程度になることが多いですが、3日ほどで下がることが多く、耳下腺の腫れも2日目が最も強く出ますが、3日目からは収まっていきます。すべての症状が治まるまでは1~2週間かかります。
おたふく風邪で合併症が起こることもあります
- 髄膜炎
おたふく風邪の合併症の中で、最も多いのが髄膜炎です。おたふく風邪を発症した子どもの1割ほどが、髄膜炎を併発しています。髄膜とは脳を覆っている膜のことで、ここに炎症が発生します。
起きる症状は、頭痛、吐き気と嘔吐、発熱などです。おたふく風邪を原因として起こる髄膜炎は比較的軽症で完治していくことが多いので、完治まで根気よく治療を受けましょう。
- 難聴
- おたふく風邪にかかった人の0.1~1%が難聴になると言い、日本では2年間に300人以上がおたふく風邪の合併症で難聴になっていることがわかっています。しかし、小さな子どもの患者さんは聞こえが悪くなったことに本人も周りも気づきにくく、小学校入学の時に行われる健康診断で発覚するケースが多く見られます。おたふく風邪による難聴は治らないため、おたふく風邪そのものを予防することが大切です。
- 膵炎
- 膵臓で炎症が起こり、ホルモン分泌や消化液の分泌に異常が起きます。おなかの右上がキリキリと痛み、吐き気や冷や汗を伴います。併発するのは10%以下ですが、重症化することもあります。
大人になってから感染すると重症化する?
おたふく風邪は小さな子どもがかかると比較的軽症で済むことが多いのですが、成人してから感染すると重症化するケースが多く見られます。39℃以上の高熱や、腫れる範囲が耳下腺のみでなくあごまで広がることがある他、腹痛や下痢などの消化器症状なども現れます。
不妊の原因になる?
10歳以上の思春期以降の男性がおたふく風邪に感染すると、1~3%ほどで精巣炎(睾丸炎)を併発することがわかっています。そのうち10%ほどが不妊になると見られます。
思春期以降の女性の場合は、7%ほどが卵巣炎を起こることがわかっています。強い腹痛や高熱、不正出血などが見られますが、片方の卵巣で起こることが多く、直接的な不妊の原因とはなりにくいですが、注意が必要です。
おたふく風邪は予防接種が受けられます
おたふく風邪は子どもの軽い感染症と考えられがちですが、合併症の危険は見逃せません。おたふく風邪は特効薬がなく、対症療法で治療を行うしかありません。特に難聴は治療法がなく、治りません。合併症の危険や感染を避けるには、予防接種が有効です。
おたふく風邪の予防接種は任意接種、自己負担となっています。1歳になったら初回接種を受け、2回目は5~6歳で打ちます。1回の費用は3000~6000です。
予防接種は小児科専門医へ
軽症と捉えられがちなおたふく風邪ですが、合併症には危険なものが多くあります。まれに起こるとも言えますが、かかってからでは後悔先に立たず、です。ぜひとも予防接種で予防しましょう。子どもの予防接種は、小児科専門医へご相談ください。