この記事の監修ドクター|藤井 里香先生(綾瀬ふじい眼科)
白内障手術を受ければ白内障は治りますが、眼鏡は必要なことがあります。また、多焦点眼内レンズとはどんなものでしょうか。
水晶体の働きとは
白内障は眼の水晶体が濁っていく病気ですが、そもそも水晶体とはどんな働きをしているのでしょうか。水晶体はカメラのレンズに例えられます。ピントを合わせて光を通し、網膜に像を届ける働きです。
水晶体は、周囲を取り囲む筋肉の力で、厚みを薄くしたり、厚くしたりして、細かなピント調整を行っています。白内障になると、水晶体の濁りだけでなく、水晶体の柔軟性も失われていきますので、光を透過する役割も、ピントを調整する役割も低下していきます。
白内障手術で眼内レンズを入れても眼鏡は必要です
白内障手術は水晶体を取り除きます
白内障によって濁ってしまった水晶体を取り除くのが白内障手術です。点眼麻酔による局所麻酔で行い、水晶体を包んでいる水晶体嚢という袋をごく小さく切開して、超音波で水晶体を砕き、吸い出して取り除きます。これを超音波乳化吸引術と言って、一般的な白内障手術の方法です。この後、水晶体の代わりに人工眼内レンズを挿入して、手術完了です。
人工眼内レンズはピントが固定されています
白内障手術の最後に水晶体の代わりに挿入する人工眼内レンズは、シリコンやアクリルなどの素材でできています。近距離、遠距離、中間距離といったよく見る距離にピントが合ったレンズを挿入しますので、その距離以外にはピントは合わせられず、ぼやけてしまいます。 このため、手術後も眼鏡は必要になることが多いのです。
眼鏡が苦手なら多焦点眼内レンズ
人工眼内レンズには単焦点レンズと多焦点レンズがあります
単焦点レンズは、名前の通り1ヶ所にしかピントを合わせられません。どの距離にピントを合わせるのかは、患者さんの生活の中でよく見る距離に合わせます。車の運転を良くする患者さんは遠距離に、読書や編み物をよくする患者さんは近距離に合わせたレンズを適用します。近距離か遠距離のどちらかにしかレンズのピントは合いませんので、あっていない方の見方をするときは眼鏡が必要になるのです。
多焦点レンズなら眼鏡が要らなくなることもあります
多焦点レンズは、2ヶ所、あるいは3ヶ所に焦点があり、ピントも2つの距離、あるいは3つの距離に合わせることができます。遠くも近くも、その中間もある程度はっきり見ることができますので、眼鏡を持たずに生活できる患者さんが多くなります。しかし、どの距離もはっきりと見えるわけではないので、結局、眼鏡をかけて見た方が楽だという患者さんも見られます。
多焦点眼内レンズのデメリット
メリットの多い多焦点眼内レンズですが、デメリットもあります。自由自在なピント調整まではできないので、無理をせず眼鏡を使った方が良いこともあるという点です。患者さんが期待されるほど、全ての距離が見えるというわけでは有りません。 次に、多焦点眼内レンズを使用すると、白内障の手術費用も眼内レンズ代も健康保険の適用外となるので、手術費用が高価になってしまうという点です。 先進医療の対象となることはありますので、眼科専門医へご相談ください。
最後に、まだ新しい技術の眼内レンズであり、扱っている医療機関が少ないことが挙げられます。また、単焦点眼内レンズではを使用しても、乱視の矯正は不可能です。 乱視矯正が必要な患者さんには眼科専門医と相談し、白内障の手術のときにできるだけ乱視矯正をしてもらうべきでしょう。
眼内レンズの選択は眼科専門医と充分な相談を
白内障手術で水晶体と置き換える人工レンズは、健康保険の適用を受けられる単焦点レンズが多いのですが、多焦点レンズにもメリットがあります。患者さんの生活スタイルや仕事に見合った眼内レンズを選べるように、眼科専門医と充分にご相談ください。