この記事の監修ドクター|岩井 良成先生(脳と神経のクリニック橋本)
脳卒中は発作も後遺症も怖い病気です。ならないためにできることは何でしょうか。
脳卒中は後遺症が怖い
脳卒中は、正式には脳血管障害と言い、脳の血管に血栓がつまったり、脳動脈瘤や細い血管が破れて出血したりする病気です。脳の血管のつまった異常部位から先の脳に酸素や栄養が届かなくなったり、出血によって脳細胞が圧迫されるなどして、その部位の脳が機能できなくなります。
その脳の部位によりの機能によって、後遺症の症状が異なります。
脳卒中の後遺症は大きくわけて以下のような障害に分かれます。
- ①意識障害
- 反応が鈍くなり、コミュニケーションに問題が出ます。
- ②運動障害と感覚障害
- 手足がうまく動かせなくなり、行動に制限が出ます。感覚も鈍くなるとケガややけどに注意が必要です。また、場合によりいやな痛みが残ることもあります。
- ③言語障害
- 言葉が出にくい、ろれつがまわらない、言葉が理解できない等の症状があります。
- ④嚥下障害
- 飲み込みがうまくできなくなり、気管や肺に食べ物や飲み物が入りやすくなって、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。
- ⑤高次脳機能障害
- 記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害などの症状が起こります。
- ⑥精神障害
- 抑うつや暴力などの精神的な症状が起こります。
- ⑦注意障害(半側空間無視)
- 障害物が見えているのに避けることができなくなります。
脳卒中は、患者さんの生活を大きく変化させてしまう、とてもたいへんな病気です。そんな脳卒中にならないためには何ができるのでしょうか。
生活習慣病は脳卒中のリスクを上げる!?
脳卒中のリスクを大きくするものとして生活習慣病があります。生活習慣病にはさまざまな病気が含まれますが、特に脳卒中との関係が強いものから見ていきましょう。
高血圧
血圧が高い状態が続くと、全身の血管に負担をかけ続けることになり、血管が動脈硬化を起こします。動脈硬化を来した血管はつまったり破れたりするリスクが高まります。脳の血管も動脈硬化を起こし、脳卒中にかかりやすくなります。
糖尿病
血液中の糖分の量(血糖)が高いまま保たれてしまう病気が糖尿病です。血糖値が高いと、血管が損傷を受け、つまりやすくなったり破れやすくなったりします。
脂質異常症
血液中に善玉コレステロールが少なく、悪玉コレステロールと中性脂肪が多い状態を脂質異常症と言い、以前は「高脂血症」と呼ばれていた病気です。脂質異常症は、全身の血管が硬く狭くなる動脈硬化を起こしやすく、血の塊がつまりやすくなります。脳卒中だけでなく心臓で血栓がつまる心筋梗塞などのリスクも高まります。
肥満
一般的には、正常な状態に比べて体重が多い状況、あるいは体脂肪が過剰に蓄積した状況を肥満と言います。特に問題なのは内臓脂肪が多すぎるタイプの肥満。このタイプは高血圧や糖尿病、脂質異常症などの他の生活習慣病の原因となり、脳卒中のリスクも高くなります。
脳卒中は生活習慣病の適切な管理で予防できます
脳卒中を予防するには、脳の血管をしなやかに保ち、つまらないようにすることが必要です。そのためには、血管のしなやかさを損なう生活習慣病を予防するとが第一です。しかし、すでに生活習慣病になっている方でも、適切な管理を行うことで、脳卒中のリスクを減らすことができます。
脳卒中に直結する生活習慣病は高血圧です。血圧を正常値に保つためことは、脳卒中の予防に欠かせません。また高血圧の原因になる脂質異常症や肥満の治療も大切です。血管をしなやかに保つためには糖尿病の血糖値管理も大切な予防です。
生活習慣の改善が脳卒中予防に効果的です
脳卒中予防に生活習慣病の管理が大切なことは先に述べましたが、もちろん、生活習慣病にならないことがもっと効果的な脳卒中の予防法です。 次のようなことに気を付けてみましょう。
- ・適度な運動で肥満や運動不足解消
- ・禁煙しましょう
- ・お酒はほどほどに
- ・しっかり休んで疲れを溜めない
- ・ストレスは上手に避ける、上手に発散
生活習慣を見直して脳卒中予防!
生活習慣病と脳卒中の関係は深く、脳卒中の原因になってしまう病気がいくつもあります。脳卒中の予防には、生活習慣病にならないための生活習慣の見直しが効果的です。生活習慣病にかかっている方も諦めないで、病気の管理をしっかりすれば、脳卒中を予防することが可能です。