入れ歯になる原因は虫歯よりも歯周病の方が多い

入れ歯になる原因は虫歯よりも歯周病の方が多い

入れ歯が必要になる、自分の歯がなくなってしまう原因の第1位は虫歯ではなく、歯周病です。歯周病はどんな点が怖い病気なのでしょうか。

「8020運動」の大切さ

せんべいをたべる老夫婦

日本では厚生労働省により、平成元年から「8020運動」として、80歳になっても自分の歯を20本以上保とうと提唱されています。歯を失うと、食べたいものが噛めなくなったり、自然に笑うことができなくなったりと、生活の質が下がってしまうので、自分の歯を保つ大切さが強調されているのです。

しかし、実際には、入れ歯を使っている人もたくさんいます。入れ歯というと高齢者のものとイメージされがちですが、歯周病の場合は、早い年齢で必要になってくるケースも多くあります。

歯周病が歯を失う原因の第1位

現在、歯周病は歯を失う原因の第1位で、42%を占めています。続いて、虫歯、破損、矯正などが歯を失う原因になります。一般的に歯周病と虫歯が歯を失う2大原因といわれますが、実は歯周病の方が虫歯より10%ほど多く見られます。

歯を失う原因は年齢によって傾向が異なります。14歳までは矯正が一番多く、その後30代までは虫歯が一番多いのですが、40代からは歯周病が一番多く、年を重ねるごとにその割合は顕著になっていきます。

歯周病は自覚症状が少ないまま進行します

歯のチェック

歯周病より虫歯のほうがズキズキとはっきりした痛みが現れやすく、歯の病気として重症のように感じている方もいるかもしれません。たしかに虫歯も厄介な病気です。しかし、歯周病は初期の自覚症状がないままに進行し、異変に気付いて受診していた頃には重症化して手遅れということが度々あります。

歯周病は、歯茎が赤く張れたり、歯磨きの時に出血したりという歯肉炎から始まり、次第に重症化して歯周炎になり、歯を支える根の歯槽骨の組織を破壊し、3分の2以上を溶かします。その結果、歯と歯肉の溝は深くなり、歯は物を噛むのも困難なほどグラグラし、しまいには抜け落ちたり、歯科で抜歯するしかない状態になったりします。そうなると元通りの歯の状態に戻ることは不可能です。その後は入れ歯もしくはインプラントでの生活を余儀なくされます。

歯周病菌の特徴

歯科医による歯のチェック

歯周病は虫歯の菌が持っていない「線毛」と呼ばれる泳ぐ足を持っており、唾液を介して口の中を泳ぎ回ることができます。そのため一度歯周病菌が入ったら、あとは口の中のいたるところに付着する危険性があり、とても広がりやすい菌です。

歯を失うような重症な歯周病なら1本だけ局所的に悪くなるのではなく、全体的に歯周尿の進行が見られ、数本、ひどい場合は全ての歯が冒されています。ある時点から急激に歯をまとめて失うことも起りえます。すると、総入れ歯になる可能性も高くなります。実際、総入れ歯の人の大半は、歯周病を原因としています。

歯周病は入れ歯も作りにくくなります

歯のメンテナンス

虫歯で歯を失うこともありますが、虫歯は歯だけで起こる病気ですので、入れ歯を入れるための歯槽堤はしっかりしています。一方、歯周病で歯を失った場合は、歯槽堤もやせ細り、良い入れ歯を作ることも難しくなります。

もちろん、簡単に入れ歯を作れないからといって失った歯を放置することはいけません。歯周病や虫歯で歯を失った人の中には、「1本だけだし」、「奥歯で見えないし」という理由で、入れ歯を作らずに放置してしまう人もいますが、歯は1本でも失うと、噛み合わせが乱れ、噛む力のバランスを崩します。そうなると歯磨きがしにくくなり、また磨き残しによる歯周病や虫歯が発生しやすくなるという悪循環が起こります。

歯周病は予防と早期治療が大切です

以上のようなことから、歯を失って入れ歯にならないために、歯周病を予防することは大変重要だといえます。そして歯周病になってしまっても、早くに治療をして進行を止めることで、自分の歯を保てます。歯は、咀嚼・発音・力の発揮・印象と様々な役割を担っています。失ってから大切さに気付いたのでは遅いのです。日々のセルフケアと、定期的な歯科医によるプロフェッショナルケアで、口内環境を整え、歯を守りましょう。