めまいの疾患を診療するスペシャリスト「めまい専門医」
めまいは日常生活の中でありふれた症状ですが、同時に日常の行動を妨げてしまうつらい症状でもあります。めまいを伴う疾患には、めまいの程度が軽いものから激しいものまでさまざまです。
そんなめまいの疾患を診療するスペシャリストが、めまい専門医です。どんな臓器を扱い、どんな疾患を診療するのでしょうか。
めまい専門医とは
めまい専門医が診療する臓器は、主に耳です。耳の奥、鼓膜の奥には中耳、さらに奥は内耳と言い、この内耳に、三半規管と言って体のバランスを保つ働きをしている臓器があるのです。この臓器に障害が起きたり、異常が発生すると、上手にバランスをとることができなくなり、めまいが起こるのです。
めまい専門医は、これらめまいに関して豊富で深い専門知識と、高い技術をもって診療を行います。めまい専門医はめまい平衡医学会が創設した専門医で、めまい診療に関する専門性を高めていく役割も担っている、めまいのスペシャリストです。
めまい専門医は、①医師でかつ、めまい平衡医学会の会員であること、②6年以上の臨床経験、③基本領域における専門医、あるいは認定医資格を有する必要があります。その上で、④めまい平衡医学会が開催する講習会を受講する、⑤受講後試験を受験し合格して初めて、めまい専門医となることができるのです。
めまい専門医で治療できる疾患とは
めまいは、突然くらっとしたり、ふらついたり、ぐるぐると周囲や自分が回るように感じることを指し、日常生活の行動が妨げられてしまう、つらい症状です。めまいが起きる疾患には、どのようなものがあるのでしょうか。いくつか挙げてみましょう。
慢性中耳炎
子どもにおなじみの、熱と耳の痛みを伴う中耳炎は、正しくは「急性中耳炎」と言い、原因は風邪などのウイルスが中耳に感染して起こるものです。これとは別に、「慢性中耳炎」という疾患もあり、これがめまいの原因となることがあります。
慢性中耳炎は、急性のものと違って、熱や痛みが起こりません。そのため、気づくのが遅れることが多い疾患です。慢性中耳炎にはいくつか種類があるのですが、そのいずれも、中耳で炎症が起き、慢性化するのが共通の特徴です。
中耳の奥の内耳には、体のバランスを調整する三半規管という機関があり、中耳の炎症が広がって内耳に達するか、中耳の炎症による耳垂れが内耳に達するなどすると、平衡感覚が障害されてしまい、めまいが起こります。軽いめまいに留まることもありますが、激しい回転性のめまいが起こって、立っていられないこともあります。
メニエール病
めまいが起きる疾患の代表的なものです。男性よりも女性に患者さんが多く、原因は、精神的なストレスや疲労、睡眠不足などであるとされていますが、解明はされていません。
内耳のリンパが腫れて内リンパ水腫という水ぶくれのようなものができ、内耳の三半規管を圧迫し、聞こえ方や平衡感覚に異常が生じます。耳鳴りや難聴が伴うこともありますが、両耳で起こることは少なく、片耳のみで起こります。
内リンパ腫が小さいと、耳詰まり程度に感じられ、めまいが起こらないこともあります。しかし、内リンパ腫が大きいか、三半規管にできてしまったときは、激しいめまいに悩まされます。
ぐるぐると激しく回転するめまいが発作として起き、耳鳴りや難聴、吐き気も伴って10分~数時間続きます。発作は繰り返し起こり、耳鳴りや難聴が後遺症として残ることもあります。
突発性難聴
突然の大きな耳鳴りと難聴、激しいめまいの発作が起こります。耳鳴りや難聴は片耳のみで起こり、発作は一度のみで繰り返しませんが、耳鳴りや難聴が後遺症として強く残ります。原因は解明されていませんが、内耳がウイルスに感染する、血栓によって内耳が血流障害を起こす、などが原因だと考えられています。
良性発作性頭位めまい症
疾患名は広まっていませんが、めまいの疾患として患者数はとても多い疾患の1つです。起き上がる、振り向く、寝返りを打つなど、体や頭の位置や向きが変わる時に、ぐるぐると激しく回るめまいの発作が起こります。耳鳴りや難聴は起こりませんが、吐き気を伴うことがあります。発作そのものは数10秒で収まりますが、繰り返し起こります。
鼓膜奥の中耳のさらに奥、内耳にはバランスを調整する三半規管と、音を感じ取る蝸牛神経があります。その2つの器官の間に、耳石器という、地面に対して頭がどの向きや位置にあるのかを感知する器官があります。この耳石器が異常を起こすため、体や頭の位置や向きが変わる時にめまいが起こるのだと考えられています。
慢性中耳炎の人、頭にケガをしたことのある人、結核にかかったことがある人などに起こりやすい疾患です。
めまい専門医ではこんな治療を行います
めまいの最中の対処法
めまいの発作が起きたら、何かにつかまる、座る、しゃがむ、横になるなど、体の安全を確保しましょう。横になって安静にし、気持ちを落ち着けて発作が収まるのを待ちましょう。その際に、部屋を暗くする、乗り物酔いを止める薬を服用するなども効果的です。
発作が収まったら、あるいは収まらないときにすること
安静にして、症状が落ち着いたら、できるだけ早くめまい専門医を受診しましょう。また、症状が治まらない、意識に障害がある、手や足にしびれや麻痺を感じるなどの場合は、脳の病気など重篤な場合があります。救急車を手配し、救急外来へ行きましょう。
めまい専門医で行う治療
めまいが起こる原因と考えられる疾患やストレス、疲労や生活習慣などを改善します。発作を繰り返す場合は、薬を処方し、再発を予防します。
手術が適用されることもあります
メニエール病が重い場合などは、手術で症状の改善を行います。
めまいは我慢せず、めまい専門医を受診しましょう
めまいはさまざまな要因で引き起こされ、症状の強弱も、めまい以外に伴う症状もさまざまです。また、発作性であることも多く、しばらく横になっていれば収まるからと、放置してしまうことも多いようです。
しかし、めまいは生活の質に大きく影響する病気です。めまいのためにさまざまな制約でできてしまうことは、患者さんにとって望ましいことではありません。つらいめまいは早めにめまい専門医を受診し、治療を受けて改善していきましょう。