この記事の監修ドクター|松下浩平先生(産業振興センター診療所)
心房細動はどうして危険だと言われるのでしょうか。病気のメカニズムから、危険な理由を見ていきましょう。
心房細動はこんな症状が起こります
- 強い動悸
- 息切れ
- めまい
- 胸苦しさ
- 胸の違和感
- 胸のもやもや
- 胸痛
心房細動は、救急車を呼んでしまうほど症状のひどい方もいる一方、自覚症状がなく、検査で見つかるまで気づかないケースも多く見られます。
心臓ではこんなことが起こっています
心臓は4つの部屋に分かれており、上部が左心房と右心房、下部が左心室と右心室です。心臓本来の正常な脈は、右心房にある洞結節という部位で電気信号が作られて発生します。心房細動になると、心房で異常な電気信号が起こり、異常に速い脈が作られてしまいます。
この異常な脈は、1分間に300~600回も心房を興奮させ、けいれんに近いものになります。正常な脈1分間に60~80回なのですから、心房細動の電気信号では、心房が充分な収縮と拡張を行えなくなります。
心房細動の電気信号によって、全身に送り出せる血液量は正常から20~30%ほど低下し、心臓の拍出量の低下が起こります。心房細動は初めのころは発作として起こる病気ですが、繰り返し起こると持続が長くなり、心不全となることがあります。
心房細動はこんな人がなりやすい
- 高齢者
- 心臓の筋肉は、電気信号を伝える役目も負っています。普通の筋肉が加齢とともに衰えるのと同様に、心臓の筋肉も劣化してきます。そのため、電気的な異常から、心房細動が引き起こされてしまいます。
- 高血圧の人
- 高血圧は全身の血管に負担をかける病気です。心臓の筋肉にも負担がかかり続けることになり、電気信号を伝える場所にも不具合が発生しやすくなります。
- 他の心疾患を持っている人
- 心筋梗塞や狭心症、心筋症や心臓弁膜症などを持っている人は、心房細動が起きる頻度も高くなります。
- 糖尿病
- 糖尿病の患者さんは、そうでない人と比べて30%ほど高い割合で、心房細動になりやすいとの報告があります。また、心房細動の患者さんの20%ほどが、糖尿病も患っています。
他にも
- 甲状腺機能亢進症の人
- 男性の方が女性よりなりやすい
- 強いストレスや睡眠不足が続いたとき
- 大量に飲酒した後
も、心房細動が発生頻度が高まります。
心房細動は大きく3つに分けられます
一過性(発作性)心房細動
心房細動が一時的に数分間から数時間、起こります。長いときは半日~1日のときもあります。原因はわからないことが多く、不整脈そのものの生命に対する危険性は高くない心房細動ですが、繰り返すようになると、持続性心房細動へ移行し、さらに慢性化することもあります。
持続性心房細動
どんな時に心電図検査を行っても、心房細動が記録されるようになります。電気ショック療法や抗不整脈薬で正常な脈に戻すことが可能です。
永続性心房細動
上記の治療法を行っても心房細動が正常な脈に戻らない状態です。心房細動は繰り返し長時間起こるようになると、心臓の筋肉が変化してしまい、正常なリズムに戻りにくくなってしまいます。
心房細動は危険な不整脈です
心房細動は、心房の収縮を低下させてしまう病気です。そのため、心房内部で血流がよどんでしまい、血流のよどみでは血栓ができやすくなります。この血栓が血管の中を脳へ運ばれて、脳の血管を詰まらせてしまい、梗塞範囲の大きな脳梗塞あるいは全身塞栓症を引き起こします。
心房細動は脳梗塞という、重大な病気を引き起こす原因になるのです。心房細動を放置してしまうと、危険因子の有無にもよりますが、心房細動のない方の5倍脳梗塞を引き起こすと言われています。また、脳梗塞の30%が、心房細動を原因として発症しています。
心房細動は循環器専門医へ
心房細動は、血栓を作りやすく、脳梗塞の原因となる危険な不整脈です。気になる症状やなりやすい条件に心当たりのある人は、早めに循環器専門医を受診しましょう。心房細動の発作は、繰り返すと悪化して慢性化します。早期発見、早期治療が大切な不整脈なのです。