この記事の監修ドクター|工藤 孝文先生(工藤内科)
気を付けたい「かくれ脱水」、注意したい「熱中症」について
「かくれ脱水」が悪化すると熱中症に!
脱水症、熱中症とは
暑いと汗をかきます。体が体温を下げるために、汗をかくのですが、拭いても拭いても汗が止まらないよう場合は体内水分量が不足してしまい、これを脱水症と言います。そうすると体は水分量を確保するために汗を止めます。暑くても汗をかかない危険な状態を熱中症と言います。
しかし、これはとてもわかりやすい熱中症です。ことさら暑いところにいる、汗だくである、汗が止まらない、あるいは暑いのに汗をかかない。これは熱中症だと誰もが気づきます。でも、脱水症や熱中症には気づきにくいケースもあるのです。
「かくれ脱水」とは
急激に汗をかくわけではなく、じっとりとかき続ける汗。あるいは冷房や暖房で、空気の乾燥で少しずつ奪われ続ける水分。これは体内水分量が「全体として少し足りない状態」を作ります。この気付きにくい状態を「かくれ脱水」と言います。
「かくれ脱水」は脱水症の一歩手前。いつでも脱水症になってしまう状態です。それなのに、変化がゆっくりと進むために発見が遅れやすく、熱中症のリスクを大きく高めてしまう危険な状態なのです。
こんな季節は注意!
- ①初夏
- 春から夏になる時期は湿度が高く、体温がこもりやすい状態です。あまり気温が高くないから大丈夫と考えがちですが、真夏よりも脱水症の危険が高まるのがこの時期です。じとじとかく汗で「かくれ脱水」も起こりやすくなっています。
- ②冬
- 熱中症の発生件数には年間通して2回、増える時期があります。ひとつは初夏、もうひとつは冬です。この時期の原因には、発熱や下痢などを伴う、風邪や胃腸炎があります。また、空気が乾燥する季節。皮膚表面から失われる水分で「かくれ脱水」の危険も高まります。
こんな人は注意!
- ①高齢者
- 高齢者は暑さを感じにくくなっています。さらに腎臓や心臓、高血圧や糖尿病などの持病があると、飲んでいる薬によって脱水症が起こりやすくなります。また、頻尿を気にして水分摂取を控える人も多く「かくれ脱水」になりやすいのです。
- ②小さな子ども
- 子どもの体温調節機能は未熟です。そのため、汗をたくさんかきますので脱水症になりやすく、少しの水分不足が大きく影響します。小さな子どもがいつもよりも元気がない、機嫌が悪い時は、「かくれ脱水」の可能性があります。
こんな時は注意!
- ①スポーツやレジャーの時
- 体を動かして汗をかくので、水分摂取を充分に行わないとあっという間に脱水症が起こります。塩分やミネラルなどと一緒に水分補給を行うようにしましょう。
- ②車の運転をしている時
- 運転は集中するので、水分摂取を怠りがちです。また、トイレ休憩を減らしたいと考えがちになるので、そのために水分摂取を減らしてしまうことも多いようです。ドライブ中も要注意ですが、運送業などに従事している人も注意する必要があります。
- ③就寝中
- 寝ている間は水分摂取をしないけれど、汗はかきます。就寝中はつねに「かくれ脱水」状態だと考えると良いでしょう。
- ④災害時
- 大規模災害時は水の不足が起こりがちです。そのため、充分な飲料水が確保できず、水分摂取を控えることが多く見られます。また水洗トイレの水も不足するため、トイレの回数を減らすために水分摂取を控え、「かくれ脱水」状態が起こりやすい状況です。
「かくれ脱水」を早期発見!その方法は?
気を付けたい症状、変化とは
自覚症状が少ない「かくれ脱水」ですが、「かくれ脱水」に自分で気づくには、こんな変化に気を付けるとよいでしょう。
- じとじとした汗をかいている
- 汗が止まらない
- なんとなく体調が悪い(夏バテ、風邪など)
- 立ちくらみやめまいがする
- 足やおなかがつる、けいれんする
- 尿の色が濃い
- 排尿回数が少ない
周りの人が気づくには?
高齢者の「かくれ脱水」はこんな変化が起こることがあります。
- 会話の内容が混乱している
- 体のあちこちがかゆい(乾燥している)
- 朝方、就寝中に足がつる
小さな子どもの「かくれ脱水」ではこんな変化があります。
- 元気がない
- 機嫌が悪い
「かくれ脱水」!その時自分でできること!
自宅でできること
まずは水分を摂ることです。塩分などがバランスよく含まれた経口補水液が効果的です。その上で涼しい場所に移動する、体を締め付ける服は緩める、横になって休むなどが必要です。
「かくれ脱水」で受診は必要?
「かくれ脱水」の段階では適切に対処すれば症状は治まります。しかし、悪化する時、自分で水分補給ができない時などは、迷わず受診しましょう。
「かくれ脱水」にならないためにできること!
1日に1~1.5ℓの水分摂取をしましょう
ひとの体が1日に必要とする水分量は1~1.5ℓとされています。一度にたくさん飲むのではなく、100mℓくらいずつ分けて摂るようにしましょう。
塩分やミネラルも一緒に摂りましょう
スポーツドリンクや経口補水液はバランスよく作られていますので効果的です。他には梅干しを食べる、麦茶に塩を足すなどもよいでしょう。
・睡眠不足を避けましょう
汗をかいて体温を調節しているのは自律神経の働きです。睡眠不足はこの自律神経のバランスを損ないやすいので、「かくれ脱水」や脱水症、熱中症が起こりやすくなってしまいます。充分な睡眠でしっかり休みましょう。
- 涼しい服装をする
- 室温を適温に保ちましょう
- 窓を開ける、扇風機を回すなど、風通しにも気を配りましょう
脱水症や熱中症にならないために「かくれ脱水」対策を!
脱水症や脱水症が悪化してなる熱中症は、命の危険もある怖い病気です。これらを予防するには「かくれ脱水」にならないこと、「かくれ脱水」に早く気づくことが重要です。「かくれ脱水」は自覚症状が少ないので、周囲の人も変化に気づいて対処できるとよいですね。