老年病専門医とは~高齢化社会で高まる必要性、高齢者医療のスペシャリスト~
老年病という言葉を聞いたことがあるでしょうか。あまり耳慣れない言葉かもしれません。老年病は高齢者の疾患全般を指します。年を重ねるにつれて、様々な疾患にかかりやすくなります。複数の疾患を抱える高齢の患者さんも多く見られます。
通院もたいへん、薬もたくさんあって不安…そんなとき、複数疾患をまとめて診てもらえたら、安心です。老年病専門医は、まさにそんな高齢者医療のスペシャリストなのです。老年病専門医とはどんな医師で、どんな診療を行うのかを知って、高齢者の患者さんの生活の質を向上させる選択肢を持てると良いですね。
老年病専門医とは
高齢化が進む社会において、高齢者の疾患を専門に診療できる老年病専門医の存在の重要性は高まり続けています。老年病専門医は内科を基礎として、高齢者の疾患に幅広く対応できる医師のことです。
老年病専門医は、日本内科学会認定医の資格取得後に、老年病専門医育成の認定施設で3年間の専門臨床研修を受けます。規定されたカリキュラムに従った研修を終えると筆記試験を受け、合格すると老年病専門医と認定されます。
認定されて老年病専門医となった後も、5年ごとの更新が必要です。5年ごとに研修を受ける他に、学会誌への論文掲載や30例以上の老年病臨床実績も必要とされます。老年病専門医は、高齢者の疾患に精通しているだけでなく、最新知識を備え、高齢者の医療全体を底上げしていく医師なのです。
老年病専門医が対象とする疾患とは
・高齢者とは
老年病は高齢者の疾患を指しますが、そもそも高齢者とは何歳以上からを指すのでしょうか。これは65歳以上が一般的な答えです。しかし、老年病は老化に伴って起こる様々な疾患です。老化は個人差がとても大きい変化ですので、予防医療の重要性も鑑みて、老年病専門医は65歳未満の患者さんも診療しています。
・老年病、高齢者の疾患の特徴とは
高齢者の疾患の特徴として、まず、1人の患者さんが複数の疾患を抱えていることが多い点が挙げられます。それらの疾患は慢性のものが多く、生活習慣病に起因したものが多いことも特徴です。また、完治が困難なケースが多く見られ、症状のコントロールや生活の質の向上や維持が必要になります。
老年病専門医で診療する具体的な疾患として、心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化、骨粗しょう症、悪性腫瘍、糖尿病、認知症、COPDなどの呼吸器疾患が挙げられます。
老年病専門医の治療について
高齢の患者さんは、1人で複数の疾患を抱えていることが多いと先に述べましたが、このため、服用する薬剤も複数重なることになります。そのため、薬害の可能性を常に念頭に置いて治療にあたる必要があります。また、疾患別に薬剤を処方するのではなく、包括的な処方で薬剤を減らすこともでき、老年病専門医にかかる1つのメリットでもあります。
さらに、高齢の患者さんは、症状や治療、薬剤への反応が若年者とは異なります。ですので、1つの検査に固執することなく、広い視野で、高齢者の生理に合わせた治療を行います。老年病は完治が困難である場合も多く見られるため、完治よりも症状のコントロールや生活の質の向上や維持を目的とした治療が多く行われます。
老年病専門医は、患者さんの生活全体を見渡して、高齢者の介護や看護にも知識や知見を持ち、包括的全人的な治療を行います。
こんなときは老年病専門医へご相談ください。
高齢の患者さんが診療について悩まれた場合は、老年病専門医がおすすめです。いろいろな疾患を抱えており、どの診療科にかかればよいのか?悩んでしまう場合や、複数の疾患をまとめて診てもらいたい場合、老年病専門医は幅広い知識と経験で、包括的な診療を行うことができます。
たくさん薬を服用していて不安になった場合も、ぜひ老年病専門医へ相談しましょう。薬は薬効が重なったり、組み合わせで副作用が起こることもあります。特に疾患ごとに個別診療を受けている場合、老年病専門医にかかれば、すべての疾患をまとめて診療できるので、薬も減らせるかもしれません。
忘れっぽくなったと感じるときや、病気なのか老化なのかわからない症状がある場合も、生活の変化や小さな気づきなどからも丁寧に診断することができる老年病専門医は、心強いでしょう。病気の療養や介護など、生活全般に不安を抱えている場合も、それらを広く見渡して、患者さんの生活の質を維持向上する診療が可能です。
老年病専門医は、全国の国立病院や大学病院、クリニックまで、幅広く在籍しています。診療科名も、内科や高齢者診療科、循環器科や内分泌科などと様々です。老年病専門医は、高齢者医療のスペシャリスト。高齢の患者さんが診療で悩んだときは、一度老年病専門医へ受診してみましょう。