小児神経専門医の中でも、発達障害に特化した発達障害診療医師
発達障害診療医師は、名前の通り発達障害を診療する専門医のことです。発達障害とは、生まれつき脳が大多数の人とは異なる発達をしていることから、いろいろな課題を生じる障害で、知的な障害は伴わないものを指します。
具体的には、学習障害、注意欠陥多動性障害、自閉症や高機能自閉症、アスペルガー症候群を指す広汎性発達障害、言語発達障害などをまとめた呼び方で、複数タイプを持っている患者さんも多く、ひとりひとり全く違った特性が見られます。
発達障害診療医師とは
発達障害診療医師は、小児神経専門医の中でも、特に発達障害に特化して診療を行っている医師のことです。小児神経は、小児科と脳神経科の間にまたがる領域で、わかりやすいものではけいれんを扱いますが、それだけではなく運動や知能、感覚や行動、言葉と心が神経系機能に生じさせる問題全般を扱っています。
発達障害診療医師は、単純に医療を提供するだけでなく、教育関係者や、保健・福祉の行政、その他支援者をなどと幅広く連携して、患者さんとその家族の生活全体のサポートも行います。
発達障害診療医師はさまざまなタイプを診療します
発達障害の患者さんは、もののとらえ方や見方、行動などに特性があり、大多数の人とは異なっているのですが、これは、多数の人が正しくて、少数の発達障害の患者さんが多数の人と同じようにならなくてはならない、というものではありません。
発達障害の患者さんは、確かに少数派で典型的でなく、「変わった子」や「困った子」と見られがちですが、難しいこと、できないことが目立つと同時に、多数の人にはない感覚の鋭さや物の見方などを持ち合わせています。発達障害の患者さんは、言ってみれば多数の人よりも「能力や得意不得意のデコボコが目立つ」とも言えます。
ですから、発達障害診療医師の役割は、患者さんの不得意なことをサポートする、別のやり方を提案するという面も大きいのです。その上で、どうしても行動特性や感覚の鋭敏さなどが、周囲との摩擦を生んでしまう場合に、薬物治療などを行っています。
・学習障害(LD)
人の学習は「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった領域に分けられますが、視覚や聴覚、知的な障害もなく、学びの環境にも問題がないにも関わらず、特定の領域に強い困難を抱えている状態を指します。
・注意欠陥多動性障害(ADHD)
年齢やその他の発達にそぐわない注意力や衝動などの問題が生じます。忘れ物が多い、集中が持続できない、行動が突発的である、などです。幼児期は誰もが不注意で衝動的ですが、大多数が年齢とともにそれらをコントロールできるようになるのに対して、学童期に入ってもそのような傾向が続く場合に、疑われる障害です。
・自閉症
話す、聞く双方の言語の遅れとともに、自分の体験を詳細まで記憶する力がとても強い特性があります。他人からはバラバラにおかれていたように見えるおもちゃの、1つ1つの位置や向きまで覚えていて、そっくり元通りに並べたりできます。聴覚と触覚に鋭敏で、他人には小さな音でも聞き分けたりできる反面、不快な音などにパニックを起こすことがあります。
発達障害診療医師が行う診療とは
発達障害はさまざまなアプローチや立場からのサポートを必要とする障害です。多くのサポートを、多様なアプローチで受けることで、患者さんや家族の状況を改善していくことができるのです。
発達障害診療医師は、医療の立場から発達障害患者さんをサポートします。具体的には、生物学的な検査を行い、それを元に診断を下すことです。診断を下すことで、患者さんの課題や困りごとを周囲に説明しやすくなることが多くあります。学校などに提出する診断書も、患者さんのサポートを増やすという点で、重要な役割を担っています。
発達障害の患者さんが自己肯定感を持って生活するためには、周囲の理解と適したサポートとともに、患者さん自身の周囲への適応力を付けていくことも大切です。学習面や生活の中で行う工夫などは、地域自治体の支援、療育施設などが得意としていることがあります。
発達障害診療医師が行う医療による支援には、薬物治療や入院治療、発達障害によって起こる二次障害(併存症)の予防と治療です。これらは発達障害診療医師にしかできない支援です。発達障害診療医師は、数多くの発達障害の患者さんに接してきた経験と知識で、幅広い視野からひとりひとりの患者さんに将来を見越した最適なサポートを行います。
患者さんや家族の自信や自尊心を損なわないために
少数派として社会で生活していくには、生きにくさが伴います。それを和らげ、特性を生かした独自のスキルを身に着けられるよう、発達障害診療医師は数多くの事例に取り組んできた経験と専門知識で、医療以外のサポートとも連携して、患者さんとご家族の生活と将来をひろく見渡した診療を行います。
大切なことは、患者さんもサポートするご家族も、自信や自尊心を損なわないように生活できること。少数派としてのユニークな育ちや育児が難しくなった時は、迷わず発達障害診療医師を受診しましょう。