子どもの医療の専門家!小児科専門医とは?
日本にはあらゆる診療科の専門医が存在しますが、小児科においても例外ではありません。小児科専門医は、数ある専門医のなかでも小児科診療に長けた医師です。
「子どもの総合医」と呼ばれる小児科専門医ですが、具体的にはどのような医師なのでしょうか?今回は、小児科専門医の医師像や特徴など、小児科専門医について詳しく解説します。
小児科専門医ってどんな医師?
日本小児科学会では、小児科専門医を「子どもの総合医」と定義しています。小児科専門医は、子どもの病気を治すだけでなく、成長過程に合わせた対応や保護者のサポートなどを総合的に援助できるスキルを身につけている医師です。
小児科専門医になるためには、多数の小児疾患を治療した実績や、子どもの身体に対する深い知識が求められます。そのため、小児科専門医を受験するには、以下の条件を満たしている必要があります。
- ・日本小児科学会が指定する専門医研修施設にて3年以上の研修を修了(2003年以前の国家試験合格者は5年以上)。
- ・日本小児科学会に在籍している期間が3年間または通算5年間。
そして、研修カリキュラムは「一般目標」と「行動目標」、「経験目標」に分けられます。
・一般目標
- 小児の特性:正常な小児の成長の知識や、保護者の心理の理解
- 小児診療の特性:年齢に応じた診療方法や、薬剤・輸液量の計算方法など
- 小児疾患の特性:発達段階での疾患の違いや、小児特有の疾患など
・行動目標
- 子どもとその家族との関係性
- チーム医療について
- 問題対応能力
- 安全管理
- 救急医療
・経験目標
- 面接や指導方法
- 適切な診察
- 臨床検査
- 基本的手技
- 薬物療法
- 経験すべき病態や疾患
- 小児救急医療
以上の研修カリキュラムからも分かるように、小児科専門医は診察・治療だけでなく、成長や発育への知識を身につけています。また、保護者の不安な気持ちに対しての心理的なサポートの方法や、症状を自分自身で説明できない子どもから適切に診断する能力を持っているのです。
小児科専門医の3つの特徴
小児科専門医は「子どもの総合医」と呼ばれることからも、対応範囲がとても広いのが特徴です。子どもを脅かしている病気を治療することはもちろん、治療後に健康的に成長できるために、総合的なサポートをしていきます。
日本小児科学会では、小児科専門医の医師像として「子どもの総合診療医であること」「育児・健康支援者であること」「子どもの代弁者であること」などを挙げています。これら3つの医師像は、他の診療科の専門医ではあまりみられない、小児科専門医の特徴を表しています。
ここでは、小児科専門医の特徴を見ていきましょう。
・子どもの総合診療医であること
小児科は特定の疾患や臓器を治療する診療科ではありません。子どもの健康を害するすべての疾患や症状に対応するのが小児科です。この対応範囲の幅広さこそが、小児科専門医の最大の特徴と言えるでしょう。
また、年齢ごとに診断や治療方法が異なるのも小児科の特徴です。例えば、発熱の治療を行うとしましょう。小児患者とは0歳から15歳までの年齢を指しますが、0歳児と14歳の患者では発熱への対処法が大きく異なります。
薬剤を投与するとしても投与量はまったく違いますし、薬剤を投与しない場合であっても、経過観察や体調管理の方法は大きく異なるでしょう。このように、小児科疾患に対する深い知識を持つだけでなく、年齢を考慮した治療方法の判断も小児科専門医が持っているスキルです。
救急治療においても、小児科では大人とは違った対応が求められます。子どもは身体の抵抗力が弱く、大人であれば特に心配のいらないレベルの疾患であっても、症状が急激に悪化するケースがあります。救急場面では、治療実績の豊富な小児科専門医による対応が必要となるでしょう。
小児科専門医は、1人の子どもに引き起こされるすべての問題を総合的にサポートできることが特徴です。
・育児・健康支援者であること
子どもは、自分の身体に引き起こされている症状や違和感などを、上手く言葉で表すことができません。そのため、成長・発達においての問題や、症状、疾患の発見が遅くなってしまうことがあります。
小児科専門医は、子どもに引き起こされている症状を発見し、対応できる能力を持っています。そして、親御さんの育児上での悩みや相談に対してアドバイスすることができるのも、小児科専門医の特徴です。
・子どもの代弁者であること
子どもが健康的に成長していくためには、それが可能である社会であることが必要不可欠です。小児疾患に対する理解やサポートを得られる社会でなければならないでしょう。
小児科専門医は、子どもと保護者、社会をつなぐことを目指しています。社会問題を解決するために、育児相談会を開催したり疾患の啓もう活動を行ったりしていることも、小児科専門医の特徴です。
小児科専門医が治療できる疾患・症状
先ほどお伝えしたように、小児科専門医は小児におけるすべての疾患や症状に対応することができます。その対応疾患・症状は膨大にありますが、ここでは日本小児科学会の研修プログラムに定められているものの一例をご紹介します。
- ・新生児疾患 :低出生体重、新生児黄疸、呼吸窮迫症候群など
- ・乳児疾患 :乳児湿疹、染色体異常症など
- ・感染症:発疹性ウイルス感染症、麻疹、風疹、手足口病など
- ・アレルギー性疾患:気管支喘息、アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、食物アレルギーなど
- ・神経疾患:てんかん、熱性痙攣、細菌性髄膜炎、脳炎・脳症など
- ・腎疾患:尿路感染症、ネフローゼ症候群、急性腎炎など
- ・循環器疾患:先天性心疾患、心不全、不整脈
- ・膠原病:川崎病など
- ・血液・悪性腫瘍:貧血、小児ガン、白血病、血小板減少症など
- ・内分泌・代謝疾患:糖尿病、甲状腺機能低下症、低身長など
- ・発達障害・心身医学:精神運動発達遅滞、学習障害など
小児科専門医は、一般的な小児科医よりも高い水準の知識や実績を持っている医師です。お子さんの身体で気になることがあるのであれば、小児科専門医を受診することで、適切な対応を受けることができます。
小児科専門医を受診するためには
小児科専門医は、平成25年の時点で全国に14940名存在しています。各都道府県の病院やクリニックに在籍しているため、お住まいの市町村で小児科専門医を見つけることができるでしょう。
小児科専門医は、専門医検索サイトにて探すことができます。当サイトでは、お近くの小児科専門医を検索することができるので、ぜひご活用してください。