糖尿病専門医とは~ニーズが高まる糖尿病に特化した専門医~
日本の医療の質を向上させることを目標に、現在国をあげた専門医制度の制定が推進されています。そのなかで、糖尿病に特化した専門医である糖尿病専門医も誕生しました。
厚生労働省によると、2016年時点での日本の糖尿病患者数は316万6000人にも上ると発表されました。2011年では270万人であったことから、5年間で46万6000人増加しており、今後もさらに増えていくと予想されています。
今や国民病とまで呼ばれる糖尿病患者のニーズと、専門医制度が合致して糖尿病専門医は生まれたのです。今回は糖尿病専門医について詳しく解説していきます。
糖尿病専門医とは
糖尿病専門医をひとことで表すと、糖尿病治療のスペシャリストです。
糖尿病は一般内科、もしくは内分泌代謝内科や糖尿病外来、糖尿病科などの専門科や専門機関で治療することになります。日々多くの糖尿病患者を診療する医師のなかでもより糖尿病に特化し、糖尿病についての豊富な知識や多くの治療実績のある、いわば選りすぐりの医師が糖尿病専門医です。
糖尿病専門医になるためには、日本糖尿病学会の認定試験(筆記試験と面接)に合格する必要があります。そして、その認定試験を受験する条件として、まずは日本内科学会の認定内科医もしくは小児科学会の小児科専門医に認定されていなければなりません。さらに、日本糖尿病学会に指定された医療機関での3年間の研修を修了し、内科30症例・小児科5症例の症例報告と内科10症例・小児科5症例の症例記録の提示を求められます。
これらの難関をくぐり抜けて晴れて糖尿病専門医となることができるのです。
高い専門性を有する糖尿病専門医は、糖尿病医療チームのリーダーを担う存在です。また、糖尿病専門科や専門機関などの高い水準の知識や経験が求められる診療だけでなく、一般内科での様々な疾患を持つ患者への治療や、クリニックや診療所での地域医療を行っています。糖尿病の急性憎悪への対応から、慢性期で症状が落ち着いている患者の血統コントロールや生活指導まで幅広い領域で活躍しています。
糖尿病専門医が対象とする疾患
糖尿病専門医が対象とする疾患は、もちろん糖尿病です。ただ、糖尿病とひとことで言っても、その症状は多岐に渡ります。
糖尿病にはⅠ型とⅡ型があるのはご存知でしょうか。Ⅰ型とⅡ型、それぞれの糖尿病の種類によって症状や治療方法も異なります。まずはそれぞれの原因や特徴、症状について見ていきましょう。
Ⅰ型糖尿病
Ⅰ型糖尿病になる原因はまだ詳しく解明されていませんが、現状ではウイルス感染が疑われています。Ⅰ型糖尿病は膵臓にあるβ細胞が破壊されることにより、血糖値を下げる働きをするインスリンが分泌されなくなってしまいます。
Ⅰ型糖尿病患者には子どもや若い方が多く、糖尿病専門医の受験条件として小児科症例の報告が求められるのにはこの理由があります。
Ⅰ型糖尿病は急激に発症し、頻尿やのどの渇き、体重減少などといった症状が出ます。血糖値を下げるインスリンが分泌されないため、食後に高血糖となるリスクがあり、インスリン注射は欠かせません。
Ⅱ型糖尿病
Ⅱ型糖尿病は、乱れた食生活や運動不足など生活習慣が原因となるため、生活習慣病のひとつとされています。Ⅱ型糖尿病ではインスリンの分泌量が減少したり、筋肉に上手く糖が蓄積されないことにより高血糖をきたします。Ⅱ型糖尿病患者に多いのは40歳以降の中年の方です。
Ⅱ型糖尿病の初期にも、Ⅰ型と同様ののどの渇きや体重減少などの症状がでることもありますが、発症が緩やかなため自覚のない方も少なくありません。
糖尿病専門医の治療方法
糖尿病専門医には豊富な知識と治療実績があり、どのような糖尿病症状に対しても治療できる技術があります。また、すでに小児科専門医または認定内科医として認定されているため、対象診療科においては糖尿病以外の疾患にも精通しています。したがって、糖尿病性腎症などの糖尿病の合併症も含めた総合的な診療を施すことができます。
Ⅰ型糖尿病に発症するリスクの高い急性合併症のひとつに、糖尿病ケトアシドーシスがあります。血糖値が急激に高くなることで血液が酸性に傾き、悪心や嘔吐をはじめ脱水症状が起こり、ひどい場合には昏睡状態から死に至ることもあります。
また、Ⅱ型糖尿病にも高浸透圧高血糖症候群という急性合併症があります。血糖値が高くなることにより、血液中の浸透圧も上昇し、体内の水分が尿として排出されてしまいます。それにより脱水症状が起こりますが、長ければ1か月ほどの期間症状が持続するケースもあり、自覚しにくいという特徴があります。口の渇きや頻尿などといった軽い症状から、意識障害に繋がり死に至るケースもあります。
Ⅰ型糖尿病によるケトアシドーシスやⅡ型糖尿病による高浸透圧高血糖症候群などの急性合併症は、脱水症状の解消やインスリンの投与、発症した何かしらの原因を突き止めるなどの適切かつ迅速な診療が求められます。
また、比較的症状の落ち着いている糖尿病患者への長期的なサポートも重要です。一人ひとりに合わせたインスリン量のコントロールや食事・運動指導、合併症が出ていないかの診断を継続的にする必要があります。特にインスリン量のコントロールや合併症の診断は細やかな対応を求められます。
糖尿病には先ほどご説明した急性合併症だけでなく、腎症による人工透析のリスクや網膜症による失明のリスクといった慢性合併症があります。また、手足の壊疽や脳梗塞・心筋梗塞なども起こり得ます。急性合併症の対処だけでなく、慢性合併症の予防においても、糖尿病専門医の高い質の診療が求められています。
糖尿病専門医を受診するなら
先ほどもお伝えしたとおり、糖尿病専門医は全国の病院や糖尿病専門機関、診療所、クリニックなどに在籍しています。
糖尿病専門医の受診を希望する方に向けて、日本糖尿病学会のホームページでは糖尿病専門医と勤務先の機関が掲載されています。都道府県ごとに検索ができるようになっています。
また、当サイト「メディカリスト」でも、関東エリアと九州エリアの糖尿病専門医を検索できます。もし受診を検討されている方はぜひご利用ください。